自身が手がけたブランドもスタートし、注目を集めるスタイリスト小山田早織さんと東急百貨店バイヤー吉田薫さん。同世代のお二人が自由にファッショントークをする期間限定連載の第二回目のテーマは「大人のファストファッションとの向き合い方」。おしゃれを楽しみながらポイントでファストファッションを取り入れる、お二人のお話をお伺いしました。
ーファッション業界に携わるお二人はお買い物頻度も多いと思いますが、シーズンでどのぐらいのトレンドアイテムを購入されますか?
吉田:通常店頭は半期で必ずセールになるので、トレンドアイテムはそのシーズンごとに買うというのを繰り返してきましたが、最近は旦那さんの考え方に影響を受けるようになり、少し買い方が変わってきましたね。昔は、まったく古着に興味がなかったのですが、シーズンに左右された「リミット」のある考え方ではなく、物の「価値や本質」と向き合った買い方にシフトしてきた気がします。一点モノやデッドストックの商品が持つ個性や味に価値があると古着に対して思えるようになりました。
小山田:たしかに消費されていくファッションのなかで、古着の考え方はステキですよね。
吉田:時代は回ってくる、じゃないですけど、トレンドって繰り返されるし、古着は、ものによっては新品より高価になることもあり、物の価値を自分なりに見極めながら自分に合う1点モノを発見する楽しさがありますね。
小山田:そうなんですね。2、3年前ならスルーしてしまいそうなアイテムだけど、今年は重宝される。そういうのも面白いですよね。
吉田:買い方の幅が広がったので、むやみやたらに服を買い漁るということはもう減りました。あと、私の場合、バッグより靴にお金を使ってしまいますかね。
小山田:シーズンの顔になるような靴を買うんですか?
吉田:基本的にはトレンドのものが多いですが、良いものであればすたれない、また時期がくれば履けると思っているのでそれなりの価格のものを買います。そういう意味では古着の考え方と同じですかね。直近で、ピエール・アルディのスリッパタイプの靴を選びました。
小山田:今年はすごくスリッパタイプ多いですもんね〜。
吉田:どうせ買うのならちゃんとしたものが欲しいなと。
小山田:今後のことも考えると、トレンドのアイテムでも先を見越して安いところでポンと買わない。そういう判断ができるのもいろいろ失敗してきた大人だからこそですよね。
吉田:本当はすべて欲しいアイテムを好きなブランドで買えたらいいんでしょうけど、なかなかそういうワケにはいかないじゃないですか。全部はキツイですよね。だから、お金をかけるところにはきちんとかける。逆にいうと、今年だけだろうなと思うものは、大人でもファストファッションで取り入れてもいいと思うんです。
ーお二人は普段からファストファッションを愛用されているんですか?
吉田:私はH&Mにすごくお世話になっていますね。去年の冬だと、シルバーのアコーディオンプリーツのスカートを買いました。普通に好きなブランドで買ったら3、4万ぐらいはしますからね。
小山田:値段を押さえて、そのシーズン思いっきり楽しむっていうのも一つの方法ですよね。
吉田:正直、来年着るか不安だったんですよね。着用回数と他のアイテムとの優先順位を考えたら、H&Mでいいやと思って。しかも、選べば意外と遜色ないし、かなり満足しています。
小山田:そうなんですよね。ファストファッションだからって侮れない。せっかく日本にはいろんなファストファッションのブランドがあるんだから、うまく使わなきゃもったいないなと思います。私もいろんなブランドの洋服を着ますけど、ファストファッションももちろんチェックしています。
吉田:小山田さんはどちらに行くことが多いんですか?
小山田:いろいろ見ますね〜。スタイリストなので、50から100のブランドのアイテムを毎月リースでまわるので、そのシーズン、どこに何があるかはだいたい把握しています。たとえば、AcneやT by Alexander Wang、James Perse に行って欲しいものを見つけても、この感じのアイテムはユニクロや無印にあったなとか、逆にこのデザインはここにしかないな、とか比較ができるんです。それを踏まえたうえで、ファストファッションで買い物をしますね。
吉田:きちんとハイブランドをチェックしてから、ファストファションを取り入れているんですね。
小山田:「今日はすごく買い物がしたい!」という日は、値段が高いブランドから順番に見ていって、最終、ファストファッションへ行って爆買いするというのも結構あります(笑)。
吉田:それ、わかります!ちゃんとファストファッションと比較購買しますよね。
小山田:すごくいいデザインでもやっぱり価値は考えちゃいますよね。たとえばこの前すごく迷ったのが、10万円のトレンチコート。ひとめ惚れしてすごく欲しかったんですけど、「一回離れて冷静になろう」と思って。
吉田:堅実なんですね。
小山田:そう、堅実なんです(笑)。フットワークが軽い方なので、いつも欲しいものがあってもすぐには買わず、ルミネや伊勢丹など、一通り気になるショップはすべて覗いて。それでも「やっぱり欲しい」ってなったら、買うようにしています。
吉田:すべて見るんですね。すごい!
小山田:いろいろなブランドを見てから買いたいなっていうのと、正直、もうクローゼットの中を増やしたくないんですよね。
吉田:職業柄どうしても買う量の服は多くなりますよね。
小山田:もう新しい服はいらない、ぐらいの量は持っているんです。でも、仕事上、今年の服を着ていた方がいいというのもあって買い物している場合も多くて。だから、値段に関係なく本当に気にいったものしか買わないし、トレンドとして必要なアイテムは価格が控えめなファストファッションでいいのかなと。
吉田:服はどんどん増えていきますもんね。
小山田:毎月、いるものといらないものを分けるんですけど、整理すると新しいものが入るじゃないですか。そうしないと、自分の気持ちも生まれ変わらないですからね。ほんとにクローゼットがパンパンなのが、一番私にはつらい。
吉田:ストレスですよね。わかります。
小山田:私、ブランドに関係なく絶対に試着して買い物するんです。それでも、朝着てみて「違うな」と思ったら整理箱にいれちゃう。
吉田:小山田さんでも失敗することあるんですね?
小山田:買ってからの時間の経過で気持ちが変わることってありますからね……。そういう意味では、トレンドというよりは、私は自分に似合っているかどうか。そういうところが大切と思っています。
吉田:トレンドもすべてを取り入れるのではなく、見極めることが大切ですよね。
ー最後に、今年ファストファッションでチェックするべきアイテムを教えてください!
吉田:私は結果的によりトレンド色の強いH&Mになっていますね。きちんと流行りを押さえていて、価格もいい。根本的にモードっぽいものが好きなんで、そうなるとやっぱりH&Mなのかなと。
小山田:H&Mはハイブランドとコラボしていたり、時代を読むのが上手だなと思う。
吉田:体力的に並んでまで買おうとは思わないですけど、普段のアイテムも全体的にほどよくトレンドとモード要素が取り入れられているので個人的に好きなんだと思います。渋谷のH&Mは大人の層にも売れている印象。店内も落ち着いた感じに編集して見やすいし、職場も近いので、帰りがけに立ち寄ることが多いです。普段でも仕事用でも使える服が見つかりますね、気分を変えたいんだけどそんなにお金かける余裕がない、でも、同じもの着たくないなってときに助かります。
小山田:私はForever21の小物が最近楽しいかな。あとGUはいいですね。
吉田:ちゃんと欲しいものを上手く作っていますよね。老若男女問わず、今GUに買い物に行っている人は多いと思います。
小山田: あと、狙い目なのは小物。H&MとはForever21のアクセコーナーを見て、「今、こういうテイストが流行っているんだ」とファストファッションの小物からトレンドを学ぶことも多いですね。とくに、渋谷のForever21のアクセコーナーが充実しているのでおすすめです。
吉田:全身ファストファッションは寂しいなとは思うんです。基本、いいものを長く着ていたいという気持ちはあります。けれど、お財布事情にも限界があるわけで。そんなときに安価でちょっとトレンドエッセンスを加えられたりと、今の気持ちを満たしてくれるものを買いにいくときは、やっぱりファストファッションが使えると思います。
カメラマン:大門徹
ライター:池城仁来
前回の対談を読む
◆【同世代対談】スタイリスト小山田早織×東急百貨店バイヤー 吉田薫のファッショントークvol.1「この春はインパクトのあるモノが主流に」