シブヤ会議 vol.01「渋谷とは何色をした街か?」色彩特化型アパレルIROYA・大野敬太と考える街の未来

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

IROYA 社長インタビュー

渋谷。                         

それは、時代の流れとともに変化し続けてきた街。
国内外からあらゆる人々が集い、新しい文化が創造されていく街。

もしこの街に「色」があるとしたら、あなたはそれをどのように捉えますか?

今回、渋谷の未来を考えるウェブマガジン「THE SCRAMBLE」では、この街で新しいアパレルビジネスを展開する、ある男性と「色」について、話をしてきました。

彼は渋谷の「色」を次のように捉えます。

IROYA 社長インタビュー

黒。

いったいこれは何を意味するのか。
読者の皆さんもぜひ一緒に想像を膨らませてもらえたらうれしいです。

IROYA 社長インタビュー

申し遅れました。ライターの根岸達朗と申します。

今回、私が話を聞いてきたのは、渋谷を拠点に「色」に特化して、新しいモノとの出会いを提案するECサイト&セレクトショップ「IROZA」を運営する「IROYA」の大野敬太さん。

IROYA 社長インタビュー

大野さんは1985年神戸市生まれ。アパレル小売店での販売接客や、大手広告代理店での営業、ベンチャー企業への投資ビジネスなどを経験したのちに独立。2013年に自身の会社「IROYA」を設立しました。

2014年には原宿キャットストリートに路面店をオープン(現在は東急百貨店東横店内で営業)。ECサイトを同時に開設し、リアルとネットの双方で「色からモノを好きになる」をテーマにしたアパレルビジネスを展開しています。

IROYA 社長インタビュー

IROZA | 色でアイテムを探せるセレクトショップ

「IROZA」ではブランドやシーズンに関係なく、毎月ひとつの「色」に絞ったファッションアイテムを提案。ブランドアイテムから一点ものの古着まで、「色」にフォーカスしたあらゆる商品を展開することによって、人が身にまとうものとして「色」、人が根源的に求める「色」のデータを蓄積し、新しいビジネスモデルの構築に挑んでいます。

渋谷の街から世界を目指して、アパレルビジネスの可能性を広げる若き起業家は、日々めまぐるしく変わりゆくこの街を、どのように見ているのでしょうか。話を聞いてきました。

話を聞いた人:大野敬太(おおの・けいた)/株式会社IROYA代表取締役。関西大学在籍中、アパレル小売店に従事し販売接客、店舗運営を学ぶ。09年に博報堂入社。アパレルEC、航空会社など大手顧客の営業に従事。退職後、外資系IT企業、コスメ系IT企業、ベンチャーキャピタルにて、マーケティング・広報、アジア新規事業開発・事業戦略、投資先のハンズオン支援を担当。13年10月、同社創業。

価格、ブランドとも違った第三の価値軸「色」

IROYA 社長インタビュー

「今回は渋谷でビジネスを展開している大野さんと、渋谷の街の『色』についてあーだこーだと話してみたいと思っています。どうぞよろしくお願いします!」

「はい、こちらこそです」

「まずはちょっと大野さんのことについて教えてもらいたいのですが、大野さんって聞くところによると、相当のファッション好きだとか?」

「まあ、そうですね(笑)。昔から異常に服が好きで、スニーカーもたくさん持っています。何百足というレベルで持っているので、家に置けなくて貸し倉庫で保管したりしてましたね」

「何百足も!? 洋服オタク?」

「そんな感じですね(笑)。だから、この事業を始めたのも自分の極端な服好きがきっかけで。でも単に服好きというだけでビジネスはできないので、やるとなったらどういうアプローチがあるかなと考えて」

「ふむふむ。それで、色をテーマに?」

IROYA 社長インタビュー

「はい。今の時代はいろんなアパレルECサイトがあるけれど、そこでものを選ぶ時って、デザインやブランド、価格などがまずひとつの基準になりますよね。でも、それ以外にもかならず検討されている要素がある。それが『色』です」

「確かに。色はかならず検討しますね。そこにビジネスのヒントを得たと」

「そうですね。日本のファッションシーンをどうやったらおもしろくできるか、どうやったらファッションを探す楽しみを広げられるか、それをミニマムに、根源的に考えていって、行き着いたのが色だったんです」

「では、そのアイディアを反映させたビジネスをこの渋谷の街から始めようと思ったのはどうして?」

「まずひとつは、このエリアに自分が好きだったアパレルカルチャーの文脈があったこと。裏原系のストリートカルチャーが特に好きだったので、その背景を感じられる場所から自分のビジネスを始めたかったんです。だから最初は原宿のキャットストリートにお店を出しました。それともうひとつは、この街の多様性にも注目したからですね」

「多様性ですか」

「はい。実は僕、この街に限定して事業をやっていこうとしているわけではないんです。そうではなくて、むしろ、色の非言語性に着目してビジネスを始めようと決めたときから、ずっとグローバルを目指しています。だから、僕にとって渋谷でのビジネスというのは、世界の多様性を視野に入れたひとつの社会実験でもあって」

あらゆる人が集う、渋谷という街の多様性

IROYA 社長インタビュー

「社会実験ですか。渋谷の街はそれに適していますか?」

「そうですね。まず、ファッションの観点では、非常にコーディネートが多彩ですよね。僕は出身が神戸なんですけど、やっぱり神戸と比べても、すごく自由な雰囲気があっておもしろいです」

「へーそうなんですか。でも考えてみたら、ストリートカルチャーの根付いた宇田川町だとか、高級住宅地の松濤だとか、いろんな雰囲気をもった地区が近距離に密集しているのは渋谷の特徴ですよね。外国人観光客も多いですし、ファッション的にもいろんなスタイルが集まってくることが想像つきます。ちなみに、これまでどんな実験をしてきたんですか?」

「たとえば、お客さんの好みの『色』を抽出する『RGBデータベース(※1)』の構築がありますね。このほかにも、全盲視覚障がい者向けの色識別タグ『いろポチ(※2)』の導入とか、実はいろいろやってきました」

※1 顧客の好みの『色』を色の三原則『RGB』で抽出してデータベース化。ネットショップとリアルショップのデータをシームレスに連携することで、色のビッグデータを構築している。

※2 「IROZA」で実践している「視覚的バリアフリー」を目指す取り組みのひとつ。タグの表面にある膨らみに触ると、その色が識別できるようになっている。

塗り重ねた「黒」、すべてを吸収する「黒」

「では、そうした実験でどんなことがわかってきましたか?」

「そうですね、ひとつ気付いたのはみんな意外とピンクが好きってことですかね」

「ピンクですか。華やかな色だとは思いますが、そんなに人気が?」

「はい。うちは女性客が7割で、男性客が3割くらいなんですが、ピンクは白と黒に次いで人気があるんです。『今月はピンク』というようなかたちで商品を打ち出すと、いつも反響が大きくておもしろいですよ。ピンクを専門で扱っている店が少ないというのもあるんでしょう」

IROYA 社長インタビュー『IROZA』で展開しているピンク色のスニーカー。NIKE WMNS AIR MAX 90 ESSENTIAL / EMBER GLOW / 616730-800 | 12960円(税込)

「渋谷はピンクと相性いいんでしょうか。街と色の関係性についてはどう思います?」

「うーん。相性はわからないですが、渋谷の色のイメージっていうのは僕のなかにはありますね」

「お、聞かせてください」

「そうですねえ。なんていうか渋谷って……」

IROYA 社長インタビュー

「黒」なんですよね。

「黒? どうしてそう思われるのですか?」

「人ってそれぞれに色があると思うんですが、そういういろんな色が何万色も集まって、塗り重ねられたのが渋谷だと思うからです。ほら、いろんな色の絵の具を混ぜていくと、最終的には真っ黒になるじゃないですか」

「ふむふむ。渋谷の街の多様性にもつながるイメージですね。でも、黒というと人によってはネガティブなイメージを持ったりしますが」

「おっしゃるとおり、黒は一般的にはあまりいいイメージを持たれません。でも、僕はこの黒に強さと、スタイリッシュさと、そしてすべての色を吸収する底知れない力を感じるんですよ」

「なるほど」

「僕にとってはそれがこの街の色なので、その色に身を委ねる気持ちで、ビジネスもやっていきたいなと思っていますね。ただ、身を委ねるとはいっても、トレンドに乗るとかそういうことではなく、ビジネスとしてはやはりサスティナブルでないといけないと僕は考えていて」

「持続可能な仕組みづくりということでしょうか」

「一言でいえば、トレンドに左右されないで、持続していけるビジネスの仕組みをつくるということです。流行りというのは、熱が上がるスピードも早いけれど冷めるスピードも早い。そこに安易に乗るというのはやはりサスティナブルではないかなと」

「ふむふむ。トレンドに左右されにくいという点では、色という切り口には普遍的なものを感じますね。季節ごとのトレンドカラーというようなものは多少あるのかもしれないけれど、逆にいえばそのくらいでしょうし」

「そうですね。しかも、僕たちは『色』をとっかかりにしてはいるけれど、実は『体験』を提案しています。色で自分らしいアイテムを探せるという『体験』。それを提供するプラットフォームとして、サスティナブルでありたいということです」

IROYAのこれから、渋谷のこれから

IROYA 社長インタビュー

「大野さんのビジネスって、ファッションアイテムを扱ったアパレルビジネスではあるけれど、それだけでは語れないような、不思議な独自性を感じるなあ」

「自分でもアパレルビジネスだと思ってませんからね(笑)」

「おもしろいです。では最後に、大野さんが渋谷を拠点に世界を目指していくにあたって、いまどのようなことを考えているのか聞かせてもらえますか?」

IROYA 社長インタビュー

「んーグローバル展開に関していえば、テクノロジーが発展しているので、日本にいても海外とつながることはできますよね。ですから、いま大事なのは、向こうでドアノックすることを急ぐよりも、日本を訪れた外国の方々が、渋谷にきて、IROZAに足を運んで、これはと思ってもらえるようなものを提案することかなと」

「まずは足元をしっかりと固めていくということですね。2020年の東京オリンピックに向かって、外国人観光客もこれまで以上に増えていきそうですし、街の色もさらに濃くなっていきそうな」

「ですね。僕はもし今の渋谷が『黒』だとするなら、オリンピックの頃には『墨』になっているのが理想的だと思っていて」

「おお、墨ですか」

「はい。渋谷という街が今以上に多様性を受け止めて、さらに日本らしい品格を表現する『墨』になっている。そんな未来のイメージに向かって、自分もできることをやっていきたいですね」

終わりに

IROYA 社長インタビュー

「色」に特化したビジネスを展開する大野さんが捉えた渋谷の色。塗り重なった多様性の「黒」が、未来に向かってより洗練度を増して、品格を持った「墨」になっていくというイメージに、皆さんはどのような思いを抱かれたでしょうか。それぞれの人にそれぞれの街のイメージがあるように、大野さんというひとりの人間が考える「街の色」に出会えた、そんな今回のインタビューでした。

「色からモノを好きになる」をコンセプトに「体験」を提案する「IROYA」。自分が身に付けたいものを「色」で探す「体験」は、価格やブランド、トレンドなどの「基準」を超えた、ファッションの新たな楽しみ方をこれからも提案してくれるに違いありません。今回のインタビューで興味を持った方は、ぜひチェックしてみてくださいね。

IROZA | 色でアイテムを探せるセレクトショップ

それではまた!

【著者紹介】

根岸達朗(ねぎし・たつろう

根岸達朗(ねぎし・たつろう)/ライター・編集者。発酵おじさん。 ニュータウンで子育てしながら、毎日ぬか床ひっくり返してます。Twitter:onceagain74

※記事の内容は公開時点の情報です。価格等の情報については変更している可能性がありますのでご了承ください。
  • このエントリーをはてなブックマークに追加