【同世代対談】スタイリスト小山田早織×東急百貨店バイヤー 吉田薫のファッショントーク vol.4「トレンドをどう料理して消費者に届けるかというのが私達の仕事」

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自身が手がけたブランドもスタートし、注目を集めるスタイリスト小山田早織さんと東急百貨店バイヤー吉田薫さん。そんな同世代のお二人が自由にファッショントークをする期間限定連載。第四回目のテーマは「時代とともに移り変わる買い物の仕方」。

ファッション 対談

「お店はただ買い物する場所からブランドの世界感を伝える場所へ」(吉田)

ー2017 年の春夏コレクションから取り組みが始まった「See now,buy now」(シーナウ・バイナウ)。ショーの翌日からその商品を販売するという方法は、今後のファッション市場への取り組みに大きく影響を与えると言われていますが、それについてどう思いますか?

吉田:昔は多かった“先買い”という買い方を今の世代はほとんどしませんからね。今の気持ちに直結しているものが店頭に並んでるほうが、購買意欲が湧くということなんですよね。ショーで得た興奮を引きずったまま購入するというのがポイントなんだと思います。今後は、百貨店という業態を問わず、いかに店頭をショールーミング化できるかが重要になってくると思ってます。

小山田:ショールーミング化とはどういうことですか?

吉田:「買い物をする場」という機能だけでなく、ショーの際に得るような「ブランドの世界感をきちんと体感していただく場」にしていくということです。ブランドの展示会に行った際に、そのシーズンのコンセプトや世界観に共鳴したとき、衝動的に個人用にオーダーするということがあるのですが、そういった感覚をお客様にも味わっていただきたいなと思うんです。ECの仕組みも上手く利用すれば、ある程度のタイムラグは軽減できると思いますし。

小山田:お客さんが展示会に参加する感覚ってことですね。そういう取り組みは今後増えそう!

吉田:「今欲しい」ものと、先買いするものって、意味合いが異なりますよね。「今欲しい」ものは、永続的に着ていくというよりは、瞬間のこの気持ちを満たすためのもの。一方、先買いや、予約して手に入れるものは、そのシーズンのキーアイテムになったり、着回しの核になってくるものなのかなと。だとすると、後者に関しては、イメージ発信をとくにきちんとするべきだと思います。どうしてもファストファッションのスピードにはついていけないですからね。差別化していかないと。

小山田:ファストファッションのスピードに対抗するのは難しいですよね。それがもちろん、縫製とかパターンに表れると思うんですが。

吉田:でも雑誌も先出しするじゃないですか? スタイリストとして、時差を感じたりしますか?

小山田:雑誌って、編集やスタイリスト、プレスの方など、いろんな方の意見が反映されて世の中にでていくじゃないですか。私はファッション雑誌の伝えたい内容はファッションだけじゃないと思っていて。

吉田:女性像ってことですか?

小山田:そうですね。ちゃんと読者のニーズに合った内容をプロが詰めて、考えて、プレスにアンケート取って、それに合わせてスタイリストがコーディネートを組んで。正直すっごく時間もかけている。Web媒体だったら2、3日でできることを、一ヶ月かけてやっているんですよね。でもそれらは、同じようでいてまったくの別物なんじゃないかなと思うんです。

吉田:キュレーションとか、web媒体とか、今はいろんな形のメディアがありますもんね。

小山田:その瞬間のトレンド情報だけじゃないのが雑誌だと思うんですよ。正直2、3カ月後のものを組んでるって感覚はあまりないんですよね。だって、展示会ってぜんぶそのシーズンのアイテムを見てるじゃないですか。ブランドの服を。だから別に変わらないというか。

吉田:たしかに、そうですよね。

小山田:トレンドってそれこそコレクションで決まってるもの。だから、どうやって日本のシチュエーション、たとえば「二次会行きます」、「上司と飲み会です」、「彼のママに会います」に落とし込むのかが私の仕事なんですよね。そう思うと、トレンドを追う感覚はあまり無い。トレンドをどう料理して消費者に届けるかというのが私達の仕事なのかなと思います。それって、今後の店舗の取り組みともすごく近いと思うんですよね。

「そこに行かないと買えない、そういうことが強みになった時代がある」(小山田)

ー今後は、何を売るかよりも、そのお店の世界観だったり、お店のコンセプト作りがより重要視されていくということなんでしょうか。

吉田:よく思うのが、展示会で見た世界観と、実際に展開されているお店にいくのとではまったく見栄えが違うというか。そのお店ごとに売れる物を店長含め編集し直しているから、展示会で見た感動が、正直薄れてしまう……という店舗もあるんですよね。店頭だけじゃなく、アプリなどブランドを体現していくメディアを作るのならば、展示会で見た感動をきちんとお客様に伝わる表現だったりをしないとダメなんじゃなかなと。

小山田:私は、NEWoManのポップアップスペースのプロデュースをした際に、店舗の世界観を作るのって本当に難しいなと感じました。

小山田:展示会の全部のアイテムが並ぶわけじゃないですしね。

吉田:「この街にはこういうテイストを好む人が多い」という理由で、それに合わせて商品を仕入れると、どうしてもブランドイメージの濁りがでてきてしまうと思うんですよね。

小山田:リアル店舗を作る難しさはそこにありますよね。今はどこのブランドもオンラインショップが充実していますけど、以前は「そこに行かないと買えない」というのが強みだった時代もあったじゃないですか。それって、お店の世界観が今より確立していたからじゃないかなとも思うんです。

吉田:たしかに。

小山田:どこまで便利にしていいのか、とかは思いません? 私たちの世代は、ギリギリ何かを並んで買う世代じゃないですか。同世代の男子はAPEに並んでいたし、私も109の初売りに始発で行って並びましたもん(笑)。若い世代の方たちには、きっとそこまでの情熱はないですよね。それって、ネットでなんでも買えちゃうからなのかなって。すごく便利な時代になったとは思うんですけど、熱量を上げづらいという意味では一長一短でもあるなあと。

吉田:これからの時代、ネットとの共存は必須だと思います。「店頭」「ネット」と切り離して考える発想はやめ、ネットの強みを上手く利用して、店舗に足を運びたくなる仕組みを作っていきたいと思ってます。「店頭」+「ネット」をその区画に対して一つのショップと捉えるのもありかなと。買い物の仕方が多様化している今だからこそ、百貨店として新しい店頭のあり方を模索していきたいですね。

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◆【同世代対談】スタイリスト小山田早織×東急百貨店バイヤー 吉田薫のファッショントーク vol.3「取捨選択するということ自体を楽しむのがアラサーファッションの醍醐味」
◆【同世代対談】スタイリスト小山田早織×東急百貨店バイヤー 吉田薫のファッショントーク vol.2「ファストファッションは今の気持ちを満たしてくれるアイテムが見つかる」
◆【同世代対談】スタイリスト小山田早織×東急百貨店バイヤー 吉田薫のファッショントークvol.1「この春はインパクトのあるモノが主流に」

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