【同世代対談】スタイリスト小山田早織×東急百貨店バイヤー 吉田薫のファッショントーク vol.5「デジタル化が進んだ今だからこそ、アナログな部分に価値がでてくる」

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ブランドも好調で、雑誌、TVとあらゆるメディアに引っ張りだこのスタイリスト小山田早織さんと東急百貨店バイヤー吉田薫さん。そんな同世代のお二人が自由にファッショントークをする期間限定連載。第五回目のテーマは「デジタル革命はファッションにどんな影響を与えるのか」。

ファッション対談

「AIは取り入れ方次第で、有効なツール。今後はリアルとバーチャルの融合を図っていく必要がある」(吉田)

ー最近、店舗スタッフの代わりに人工知能(AI)を使ってお客様に洋服のアドバイスをする試みがありますが、その辺についてはどう思いますか?

小山田:私が立ち上げたブランドはECサイト専門なんです。地方に出張に行くことが多いんですが、そこで思ったのはやっぱり地方だとネットでないと買えないものもたくさんあるし、ブランドの世界観を店舗で作るのってとっても大変。なので、今回はEC限定にしたんです。ECサイトだけのほうが、世界観はつくりやすいですからね。そこに、AIが加わってきたらよりよいサービスを提供できる。ものすごく需要もあるし、今後の発展のためにも、AIがもっと進化したらありがたいなと思ってます。

吉田:当社ではまだAIを取り入れてないですけど、今後はより重要な要素になってくると思いますね。自分にあった商品を科学的な検証データを基に何通りも提案できるのはAIならではの強みだと思います。時間がない人や客観的な意見を必要としている人は有効なツールですね。ただ、洋服は実際に着て、着心地や素材感を体感していただきたいので、是非店頭にいらしていただきたいというのが本音ではありますが……もし家でもそれを体感できるのであれば、営業時間に拘束されることなく買い物が楽しめるようになるので、VR(バーチャルリアリティ)の更なる技術進歩に期待したいですね。

小山田:実際に着て、テンションがあがって初めてお金払ったりするもんですもんね、洋服って。バーチャルでの試着って着替えるの面倒くさい、と今は思ってしまいますね。

「人工知能に人と同じおもてなしはできないと思う」(小山田)

ーAIが発達することにより、販売員やスタイリストの役割を担う場面も増えてくると思いますが、それについてはどうですか?

小山田:いいと思います。逆に知りたいぐらい。データをもとに算出されたものならば、組わせもそういうのがあるんだって理論的に思うだろうし。正直、スタイリストっていなくても大丈夫な職業じゃないですか。資格が必要なわけではないから誰でも出来るし、特殊能力でもないと思いますし。トレンドをニーズに落とし込む作業をする立場。ネガティブな意味じゃなくて、人工知能が発達して日本のファッションレベルがあがるなら、それでスタイリストの仕事が減ってもいいと思います。

吉田:なるほど。すごい。私は、百貨店とか路面店のブティックで買うというのは、おもてなしに対する対価だと思うんですよね。ネットでの買い物は、そういう場で得られる喜びはないじゃないですか。おもてなし自体がある種、ステイタスになっていて、それらがひっくるめて価格に入っている。そういうところの差別化じゃないのかなと思いますね。

小山田:人工知能に人と同じおもてなしはできないですよね。

吉田:そう、微妙なニュアンスの受け取りや、その時々で求められる臨機応変な対応は人の方が優れていると思いますからね。

小山田:スタイリストも「この人にスタイリングしてもらいたい」と思われて。はじめてスタイリストが稼働することになるから、人工知能がどんなに発達してもそこで負けちゃいけないなとは思いますよね。

吉田:たとえば、ホテルの人がお客様のしぐさだけを見て、「あちらに喫煙所がありますよ」と言ってくれたりする。そういう言葉に発しない「人の想い」をどこまでAIが汲み取ることができるのか。それこそが、人が接客する意味であり、価値だと思ってます。30代になって思うのは、逆にアナログな部分に価値を求めるようになりましたね。そういう経験が増えれば増えるほど、そういう部分にもお金を払えるようになってきましたね。

「時間やお金がかかっても、「安心・安全」クオリティは守っていきたい」(吉田)

ーそれでいうと、百貨店にはそういった安心感みたいなものがありますよね。親世代もそうですし、なにかちゃんとした場面でもお買物は百貨店という人も多いと思います。

吉田:百貨店は、若い人達が思っている以上に、安心安全に対して敏感な業態だと思いますね。特にご年配のお客様は、百貨店で販売している商品=安心・安全が保障されているという期待値が高いので、SCではおそらくないようなご指摘をいただくことが多々あります。
例えば、化粧品なんかは、どんなに見た目が可愛くて、今の時流にあったファッション性の高い商品を取り扱っていたとしても、得体のしれないブランドを誘致するということはまずありません。必ず、ブランドの背景、薬事法の観点、他店での取り扱い状況、接客スキルのレベルなど、、、あらゆる点で百貨店基準に達しているか厳格にチェックをしながら、慎重に取り扱いを決めたりしています。そこは時間やお金がかかっても、守って行くべきことであると自負していますね。

小山田:その”安心感”はちゃんと刷り込まれていますけどね。ちゃんとしたシチュエーションに何かを持っていくとかってなると、やっぱり東急百貨店の袋に入っているとか、包み紙がある方がきちんとして見えるなと思う。それは、百貨店の価値ですよね。

吉田:新しいことに挑戦していきたいというのはもちろんあるんですけど、それよりも食べた時にどうなの?、身につけた時に人からどう思われる?など、購入後のお客様のことまで考えることの方が重要だという思想なんですよね。

小山田:他にも百貨店ならではなものってあるんですか?

吉田:そうですね、たとえば、最近人気ブランドで取り置きは一切お断りという制度をとっているところが増えてきたんですけど、百貨店では基本的にお断りできないので、一度はお受けするようにブランド内で調整していただいてます。なので、百貨店のみ取り置きできるブランドさんが実はあったりするんですよ。

小山田:そうなんですね。知らなかった!

吉田:代引き配送なんかも同様ですね。百貨店は「お客様が一番」なんです。それがスタンダードだから、いろんなブランドさんにご理解いただきながら、百貨店の制度に歩み寄っていただいてますね。

小山田:それは百貨店の強みですね。すごい、感動した!

吉田:でも、そこを若い世代は求めてないのかもしれないですけどね(笑)。

小山田:知らないだけじゃないですか? 利便さより感動とか体験が勝れば、百貨店にみんな足を運ぶようになると思いますね。

吉田:百貨店で取り扱っている商品は色々な基準をくぐり抜けてきているので、安心して買ってくださいと若い世代にも伝えたいですね。ちなみに、お洋服もそうなんですよ。洗濯堅牢度とか、摩擦堅牢度とか展開するにあたって、きちんと百貨店の基準があるんです。カシミアも100%表記のものは取引先にきちんと証明書を提出していただいてますからね。

小山田:けっこう厳しいんですね!?

吉田:展開できないという話ではなくて、たとえば何かあった時に、きちんとお客様にご説明を差し上げなければならないので、必ず証明書を用意してくださいということなんです。というのは、お客様はブランドから購入しているのではなく、百貨店から購入しているという意識なので、クレームは百貨店に入るんですね。ですから、私どもは取引先のことであっても、百貨店へのご指摘と受け止めて、取引先と一緒に対応する。そういった一体感が全て百貨店クオリティなんです。

小山田:でも、それについていけないブランドもありそうですよね。

吉田:どっちかですね。厳しいことをいわれるけど一緒にお客様からの信頼を勝ち取っていくほうを選ぶか、自分たちの表現したいことを理解してくれるお客様だけを取り込んでいきたいと思うかの違いですかね。

小山田:でもそれだけの厳しい検査があるから、それに見合う価値がちゃんとある。それをもっと若い世代に伝えたいですね。この話を聞いたらすごく百貨店でお買い物したくなってきました(笑)。

吉田:ありがとうございます!

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