映画解説者・中井圭の「今宵は渋谷で映画でも?」vol.19 スパイ映画の熱狂再び『キングスマン:ゴールデン・サークル』

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本コラムでは、「映画をもっと知りたくなる」をテーマに、渋谷で観ることができる作品をご紹介します。19回目は、2018年1月5日(金)公開の映画『キングスマン:ゴールデン・サークル』です。渋谷を行き交う若者たちも前作『キングスマン』に熱狂した人も多いでしょう。その続編である本作は、TOHOシネマズ渋谷でご覧いただけます。

『007』へのカウンター的スパイ映画

キングスマン:ゴールデン・サークル

ロンドン郊外で冴えない日々を送っている若者エグジーが、ある日、謎の諜報組織キングスマンにスカウトされ、超絶スパイへとトレーニングされて世界を救うーー。

ある種のハードボイルドなシンデレラストーリーだった前作『キングスマン』は、ハイスピードカメラをケレンミたっぷりに使用するその斬新な映像表現や、ウィットに富んだセリフ回し、ちょっと下品さすら漂う笑いの数々が観客に受け入れられて、世界中でヒットを記録しました。

前作および今作の監督は、マシュー・ヴォーン。彼は元々、ガイ・リッチー監督作品のプロデューサーワークなどで知られていましたが、本人も監督業に本格的に乗り出し、アクション秀作『キック・アス』で一気に一流監督の仲間入りを果たしました。

そんなマシュー・ヴォーンが手がけた前作のヒットの背景にあったのは、先輩スパイ映画である近年の『007』シリーズに対する反発もあったでしょう。筆者は大好きなのですが、近年の『007』シリーズには“シリアスすぎる”という意見が寄せられています。

つまり良い意味で荒唐無稽なスパイアクションものだった往年の『007』シリーズに対して、現実社会の背景などを意識したリアリティある設定が、一部のファンから「暗い」「これじゃない」という拒絶に近い反応を示されていたのです。

マシュー・ヴォーン自身も、かつての『007』シリーズど真ん中世代。彼もまた「これじゃない」感を抱え、彼なりの『007』を表現したのが、明るく楽しい前作『キングスマン』だったと言えます。

キングスマン、アメリカへ

キングスマン:ゴールデン・サークル

そして本作『キングスマン:ゴールデン・サークル』は、前作で独り立ちをすることになったエグジーが、いきなり窮地に陥ります。キングスマンの各支部が麻薬組織ゴールデン・サークルによってハッキングされミサイル攻撃によって全滅してしまうのです。

かろうじて逃げ延びたエグジーは、同じく生き残ったサポートスタッフのマーリンと共に、キングスマンを破壊した組織と対決するために、アメリカに渡り、ステイツマンという謎の諜報組織と接触することになります。

キングスマン:ゴールデン・サークル

イギリス人スパイのアイデンティティはスーツで表現されていましたが、アメリカではカウボーイスタイル。タイプも全然違う彼らと共闘して、ゴールデン・サークルと対決します。

頭を空っぽにして楽しもう

キングスマン:ゴールデン・サークル

本作もまた、「暗いシリアスなスパイは御免だ」とばかりに、前作に輪をかけた荒唐無稽なスパイアクションが散りばめられています。アメリカのステイツマンメンバーはカウボーイスタイルということもあり、投げ縄など新しいアクションを披露しているのも斬新。

さらに前作の世界的成功を受けて、アカデミー賞受賞歴のあるジェフ・ブリッジス、ジュリアン・ムーアなど、豪華キャストが参加することで、ライバル『007』シリーズに見劣りする要素を減らしています。

キングスマン:ゴールデン・サークル

個人的には、前作と比較してキャラクター描写や展開などが若干大味になった部分も感じますが、そもそも荒唐無稽で細かいことを気にしないのが持ち味の本作に、緻密さを求めること自体が野暮なことかもしれません。

それよりも休日に頭を空っぽにして、ド派手で笑えるスパイ娯楽映画としての本作を堪能するのが正解でしょう。さらに予想外の展開が待ち受けるラストに、この先『キングスマン』シリーズはどうなっていくのか、思いを巡らすのも面白いと思います。

▼Information
『キングスマン:ゴールデン・サークル』
(C)2017 Twentieth Century Fox Film Corporation
1月5日(金)よりTOHOシネマズ渋谷ほか全国ロードショー

▼中井圭 プロフィール
兵庫県出身。映画解説者。WOWOW「映画工房」ニコ生公式「WOWOWぷらすと」「シネマのミカタ」TOKYO FM「TOKYO FM WORLD」などに出演中。「CUT」「STUDIO VOICE」「michill」「Numero TOKYO」「観ずに死ねるか」シリーズなどで映画評を寄稿。東京国際映画祭や映画トークイベントに登壇し、映画解説を展開。面白い人に面白い映画を観てもらって作品認知度を高めるプロジェクト「映画の天才」や物事に関心のある人を増やすPJ「偶然の学校」などを主催。

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