2017年4月に渋谷にオープンした複合クリエイティブ施設「渋谷キャスト」。その中に位置するするクリエイター特化型のシェアオフィス、「co-lab(コーラボ)渋谷キャスト」には、IT系から映画監督まで、約150人ものクリエイターが利用しています。今回は会員の方々に、現在の活動やシェアオフィス活用の実態、渋谷の街に対する想いを伺いました。
ロボットと人間が共存し、日常生活を共にする未来。そんなSFのような世界を誰しも一度は思い浮かべたことがあるのではないでしょうか。そんな世界の実現を本気で目指して人工知能とロボット開発を行う企業があります。アメリカ発のスタートアップ企業、AKA株式会社です。
今回は、同社が開発、販売を行う英会話AIロボット「Musio(ミュージオ)」について、日本支社の西村拓也さんにお話をお伺いしました。同社オフィスも入居する「co-lab(コーラボ)渋谷キャストからお送りします。
Q1:今のお仕事はどんなことをされているんですか?
まず、会社自体のご紹介をさせてください。弊社はAKA株式会社と申しまして、人工知能のエンジンの開発と、それを乗せた英会話ロボット「Musio」を開発しています。本社はアメリカにあり、韓国、ドイツにも拠点を置いています。
日本支社は唯一の販売拠点となってまして、Musioのビジネスやマーケティングの戦略を決め、プランを作り、それを実行するところまで行なっています。2015年の11月に日本支社ができたのですが、私自身は2016年4月からジョインしています。
Q2:「Musio」はどんなところで使われているんですか?
「Musio」は、一般消費者と法人の両方で販売してまして、今は消費者向けの方が台数としては多いですね。ただ最近は学校からもお問い合わせいただくことが増えていて、戸田市や柏崎市といった市区町村の教育委員会と連携し、学校の英語の授業でも活用してもらっています。
Q3:「Musio」にはどんな機能があるんですか?
全部で3つあります。
1つ目が、Chatモードといって、人工知能と自由に会話する機能です。ネイティヴスピーカーと話しているような感覚で会話を楽しむことができます。
2つ目が、Tutorモードという教材と一緒に勉強できる機能です。Musioと連携するSophyというスキャナで教材を読み取ると、それに反応してMusioが単語を教えてくれたり、問題を出してくれます。
3つ目が、Musioと単語や表現、会話文を反復練習するEduモードという機能です。Musioと一緒に発音練習やクイズ、ロールプレイングを行うことで、基本的な英語を身につけることができます。
Q4:学校では、どんなふうに「Musio」を使ってもらうんですか?
学校では、3つ目のEduモードを中心に、生徒ひとりひとりがスピーキングを練習するのに使ってもらっています。先生と勉強した表現や文章を、Musioとの反復練習や発音チェック、クイズを通じて定着させることができます。
例えば簡単な発音チェックでしたら、
(西村さん)“ I live in the house near the river”
……
(Musio)“Good job !”
といった具合ですね。
学校では、一人の先生が全員の生徒と練習するのは難しいと思いますが、Musioがいれば生徒全員がそれぞれSpeakingの練習をすることができます。
Q5:「Musio」のコンセプトを教えてください。
もともと弊社が立ち上がったのは、ロボットと人間が友達になる世界を実現したい、という想いがあったからなんです。ドラえもんや鉄腕アトムみたいなロボットを作りたい、という想いで人工知能の開発をしていました。
世の中にはすでにいくつか販売されているロボットはあります。ただ、まだまだ一般家庭に浸透しているとはいえないと思います。
それらのロボットは色々な機能を持っているかとは思いますが、購入する明確なメリットや用途がうまく伝わっていない印象があります。そこで、弊社では、まずはロボットという存在が消費者まで勝手に普及していくように、英語教育に着目しています。
Q6:人工知能というと、最近ではAIが人の仕事を奪うということも言われています。英語教育も人工知能が奪っていくのでしょうか?
弊社では、人工知能が人間から仕事を奪うというよりは、人間との共存が必要かな、と考えています。
ロボットは記録や反復は得意ですが、高度なクリエイティビティやコミュニケーションの部分はまだまだ苦手ですので、今のMusioが学校で先生とうまく役割分担できているように、今後も共存してサポートし合うような感じで進んでいくのかな、と思っていますね。
ロボットはストーリーがあるから好きになる
Q7:小説「Musio Ⅰ:電脳メイロ」も出されています。書籍で伝えたかったポイントは何ですか?
ロボットはストーリーやキャラクター性が重要だと思っています。ドラえもんとかみんな好きなのは、ストーリーがあるからですよね。外見だけだと意味がない。書籍を出した意図はそこです。
小説の内容は、「人間と人工知能の関わり方がつながりを作っていく」という大枠だけ決めて、あとは基本的に作家の真山碧さんにおまかせしていました。
あらすじは、白の正義のMusioと黒の悪のMusioがいて、悪のMusioが未来からきて、人間をほろぼそうとするのを、白のMusioと主人公の女の子が食い止めようとするという、ターミネーター的なストーリーになっています。そこで、人工知能と人間ってどうなんだ、ということを問う内容なのですが、よかったら読んでみてください。紀伊國屋書店の週刊文庫ランキングでも1位をとったりしています。
ちなみに、こちらはすでにオーディオブック化もしていまして、今後は漫画やアニメにも展開していけたらと考えています。
Q8:今後、Musioに付け加えていきたい機能や改善したいところは何ですか?
今は英語学習にフォーカスしていろいろ機能をつくってきたので、今後はそれ以外のこともできるようにしていきたいですね。たとえば腕の部分を外すと、いろんなものをつけれたりとか。
こちらはArduino(アルデュイーノ)というオープンな開発プラットフォームを使ってまして、今はLEDが入っています。そこに、例えば赤外線センサーをいれたらテレビをつけてくれるとか。また、胴体の部分も外せるようになっているので、ここにタイヤをつけることもできると思います。外部のエンジニアさんとコラボして、もっとMusioでいろんなことをしてみたいですね。
Q9:co-lab渋谷キャストに入ったのは、いつ頃ですか?
co-lab渋谷キャストには、去年の年末から入っています。それまでは中目黒にいたのですが、Musioのオリジナルストアを作りたいと思い、co-labさんに相談しにいったことがきっかけです。結局オリジナルストアは自社で作りましたが、それがきっかけでco-lab渋谷キャストに日本オフィスを移転することになりました。
Q10:渋谷の街のイメージをお聞かせください。
渋谷は、新しいことが集まる街だな、と思います。あと、多くのスタートアップが集まっている街でもありますよね。大学生の頃から渋谷にはよく来ていますが、当時はヒカリエもありませんでした。どんどん変わっていったり、進化する街だな、と思いますね。
Q11:今後の渋谷の街に期待していることは何ですか?
新しいことを取り入れている街になってほしいですね。ロボットや人工知能、最近だと自動音声、ブロックチェーンなどいろいろ新しいキーワードが出てきていると思いますが、そういう新しいことを試せる街になってほしいです。
例えば、ドローンだと飛ばせる場所がなかったり、やっていいのか自体分からない、という問題がありますよね。国家レベルとしては規制が必要だと思うのですが、どこかの市としてはそういうことをできるようにしていかないと、日本としても出遅れてしまうと思います。
渋谷の街がそういうものをどんどん受け入れてくれる街になると、日本のスタートアップを支えるテクノロジーが普及していく上で、重要な街になるんじゃないかな、と。スタートアップ側としても、最初の1個目の事例を作るのが一番難しいんですよ。そこで、渋谷がファーストペンギン的な役割となってくれると広めていきやすいな、と思います。
[取材を終えて…]
西村さんの話を聞いて、ロボットと人間が共存し、日常生活を共にする未来は、まだまだ先の話かと思い込んでいましたが、そんなことはなく、すぐ近くまでやってきているのだと実感しました。いつか「Musio」と共に暮らすのが当たり前になるような未来が楽しみです!
取材協力:
◆co-lab 渋谷キャスト
http://co-lab.jp/
◆AKA株式会社
https://themusio.com/aboutus