2017年4月に渋谷にオープンした複合クリエイティブ施設「渋谷キャスト」。その中に位置するするクリエイター特化型のシェアオフィス、「co-lab(コーラボ)渋谷キャスト」には、IT系から映画監督まで、約150人ものクリエイターが利用しています。今回は会員の方々に、現在の活動やシェアオフィス活用の実態、渋谷の街に対する想いを伺いました。
音楽は、古来より人間が楽しんできた営みのひとつです。そんな音楽は今やIT技術の進歩により、音楽配信アプリや動画サイトなどを通じて、どこでも手軽に楽しめるようになりました。
しかし、音楽そのものを楽しむ環境はどうでしょうか。好きな曲をカセットテープにいれて、どこか自由に楽しんでいた時代と比べると、現代はインターネットで便利になった反面、何かと著作権や楽曲の配信権利といった縛りを意識しがちな時代になっているのかもしれません。
「もっと音楽は社会の中にあるべき」。そう語るのは、iTunesをはじめ、各種の音楽メディアに関わってこられた、NPO法人パラ・ラ・ムジカ代表の原山礼二さん。入居されているシェアオフィス「co-lab(コーラボ)渋谷キャスト」で原山さんに、お仕事と音楽についてインタビューをさせていただきました。
はじめまして。NPO法人パラ・ラ・ムジカの代表理事の原山と申します。よろしくお願いします。
Q1:いつからNPOをされているんですか?
NPOは今、4年目ですね。私自身はキャリアとして、ラジオ局、MTV、AppleのiTunesという形でずっと音楽メディアに携わってきました。iTunesに関わっていたとき、次は何かな、と思ったときに空間メディアに携わろう、と思ったんです。
当時も今もそうですが、音楽ビジネスは権利の世界なんですよね。権利を持つ人と、使う人との中で、お互いを尊重しながらいい距離感を保たないと、楽しみなはずの音楽も人々から離れて行ってしまいます。
例えば、HipHop は、ビートをサンプリングして新たな音楽を楽しむことで新たな音楽として生まれてきたし、日本でも古くはラジカセとかで好きな人のために曲を集めたりして、音楽を使って日常の中でもっと遊べていたと思うんです。
でもあくまで、お互いの権利を守った上でないと法律に触れてしまいます。今は結果として、昔のように気軽に音楽で遊ぶ機会が減っていったように思います。そして次第に人々から音楽が離れていってしまったと感じています。
本来、音楽はもっと社会の中にあるべきだと考えています。人々と音楽の距離を近づけたい、という思いからNPO法人パラ・ラ・ムジカの活動を始めました。
Q2:パラ・ラ・ムジカの具体的な活動を教えてください。
今は、スマートフォンアプリ「記憶のおと(仮)」の企画・開発をしています。5月にローンチ予定でして、今開発しているところです。どんなものかと言うと、ラジオ番組っぽいものを作れるアプリです。例えば、自分の父親が高齢者で好きな音楽さえも聴けない状態だったとしたら、息子が父親のためだけのラジオ番組を作ってあげて聴かせてあげる、そんなアプリを目指しています。
つまり誰かと誰かがいて、音楽がコミュニケーションの媒体になるようなアプリを目指しています。高齢者の集うカフェとかで、高齢者の方々の思い出を集めてコミュニティ内で番組を聴いていただく、そんなサービスも考えています。
特に高齢者の方にはもっと音楽を聞いてもらいたいですね。というのも、音楽には高齢者に埋もれていた記憶を思い出させてくれる効果がきっとあると信じているからです。「パーソナルソング」というドキュメンタリー映画があるのですが、それまで死んだ目のようになっていたご老人でも、音楽を聴くことで、生き生きとした表情に変わるんですよ。
アプリ開発以外では、他のNPOと協力して、物語を伝える読みがたりのイベント「artenarra(アルテナラ)」の企画/協賛も行っていて、この2月にキックオフイベントを予定しています。物語って僕の中で音楽でいうとメロディと近いと思っていて、そこからも社会にアプローチしていけると思ってるんです。
Q3:co-lab渋谷キャストに入られた理由は何ですか?
もともと西麻布のco-labにいたのですが、そちらの閉鎖に伴ってこちらに来ました。ただ、こちらにきたのはco-labがいいと思っているからです。co-labがいいのは、入っている人たちがクリエイティブで魅力的で、キュレーションされていることです。活躍されている人も多いですし。場の雰囲気って人が影響すると思っています。
co-labでできたつながりから、ホームページ制作やアプリの制作も信頼のおけるところにお願いすることができました。こういうの頼む時ってどこに頼んだらいいか分からないので、有難かったですね。
あとは、イベントも開きやすいですね。普通、カフェでイベントをするとなると、電話して、店長と交渉して、という感じで結構大変です。ここでは、併設されているカフェがイベント利用OKになっているので、ワークショップを開いたりするときはとてもやりやすいですね。
Q4:渋谷の街への想いをお聞かせください。
渋谷の街は、今は変化している過渡期ですね。昔は若者とファッションの街でしたが、今は多様性の街ですね。子供も大人も、音楽もファッションも、ビジネスも。なんでも生まれる場所になるという期待がある。今は、駅前のビルが建てられていますが、完成すればまた渋谷の街は変わると思いますよ。
[取材を終えて…]
音楽をもっと社会の中に。音楽メディアに携わり続けて、NPOを作った代表の原山礼二さんの熱い想いが感じられる取材でした。様々な形で音楽との接点を作り出す、原山さんの今後の活躍に期待です!
◆co-lab 渋谷キャスト
http://co-lab.jp/
◆NPO法人パラ・ラ・ムジカ
http://para-la-musica.or.jp/