クリエイター専門シェアオフィスってどんなところ? co-lab渋谷キャストの入居者にインタビューVol.6

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2017年4月に渋谷にオープンした複合クリエイティブ施設「渋谷キャスト」。その中に位置するクリエイター特化型のシェアオフィス、「co-lab(コーラボ)渋谷キャスト」には、IT系から映画監督まで、約150人ものクリエイターが利用しています。このシリーズでは、会員の方々に現在の活動やシェアオフィス活用の実態、渋谷の街に対する想いを語っていただき、ご紹介していきます。

インターネットの普及は、個の多様化をもたらしました。とりわけ、TwitterやInstagramのようなSNSは、ひとりひとりが自分の指向に合わせて自由に情報を受発信できる環境を促進しています。このような社会の変化を、クリエイター達はどのように受け止めているのでしょうか。

今回は、有限会社ペーパーバックの則武弥さんに、デザインとの向き合い方についてお話を伺いました。co-lab渋谷キャストからお送りします。

デザイナーはハブになることが大事 個人事務所からco-labに入居

Q1:co-labにはいつ入られたんですか?

co-lab渋谷キャストができる前から、入居しています。当時は渋谷の東急ハンズの裏あたりに運営母体があったのですが、その初期の頃からお世話になっていますね。もともとは千駄ヶ谷に入ろうと思っていたのですが、渋谷ができるという話を聞いて、すぐに決めました。

有限会社ペーパーバック 則武弥さん

Q2:co-labに入るきっかけは何だったんですか?

以前は事務所でアシスタントとやっていたのですが、アシスタントがやめてしまうと、1人でひとつのオフィスを運営するのはなかなか大変なんですね。契約などもそうですが、年末は事務所と家の大掃除があるし、わずらわしいことが多いんですよ。

それと、個人事務所だとコミュニティが孤立してしまうというところがありましたね。デザインというのは、コミュニケーションの道具なわけですから、いわゆるハブになっていかなきゃいけないわけです。ほかの人の考えや思想に柔軟に滑り込み、フラットに仕事をする姿勢が求められるんです。そんな中で、事務所という固定の場所にとらわれてしまう、というのはちょっと違うんじゃないかな、と。

あとは、時代の流れもあったと思います。僕らの世代では、個人事務所がないと一人前のフリーランスとして認めてもらえない、みたいなところがありました。今はあまりそういうことにこだわらない風潮になっていますよね。

10年くらい前から、パソコンひとつあれば、どこでも仕事できるという時代になった。その流れもあって、事務所と大きなパソコンがないと仕事ができないことに対しても、少し違和感がありました。今は13インチのノートパソコンでできる仕事だけ受けるようにしていて、場所にこだわらない働き方ができるようにしていますね。

現代は、1対多ではなく、1対1のデザインが求められている

Q3:お仕事はどういったことをされているんですか?

1995年に会社を設立してからは、「一般社団法人CSV開発機構」「ウッドデザイン賞」のロゴマークのデザインや、「瀬戸焼き」「奥出雲 たたら」のブランディング支援、プロダクトデザイン、ブックデザインなど幅広くデザインに関わってきました。

また、ダイアローグ・イン・ザ・ダーク・ジャパンとコラボして、視覚障がい者の方々と一緒に、会津漆器の商品開発を行う、というプロジェクトにも携わってきました。視覚障がいを持つ方々が持つ、特別な触覚を活かして漆器の使い勝手を追求した企画ですね。

Q4:お仕事では、どんなことを大事にされていますか?

1対1のデザイン、ということを大事にしています。1対マスではなく、1人から始まる商品開発です。

デザイナーとは、クライアントの商品をどう社会に広めて理解してもらうか、という世界でもあります。ただ、現代の世の中では、皆をひとくくりにマスとして取り扱うことにもう限界があると思っています。誰もがSNSという自分のメディアを持ち、価値観が多様化しているので、ひとつの商品に対して、出口がひとつというのはあまりにも無理がある。

というのも、プロジェクトの初期に企画した商品が、マスを意識するあまり、とがっていた企画がだんだん丸くなり凡庸なものになっていくという場面を仕事ではよく見るんですよ。色々な意見がある中で、最大公約数のようなものを使い回しているんですね。

でも、価値を作るときって、どんな人も必ず価値を持っているんです。個人として、子供もおじいさんも、価値をもっている。例えば、子供にカメラを撮らせたら素晴らしい作品ができるかもしれないですし、視覚障がいがある方は体が不自由なことで特別な能力をもっているわけです。人がそれぞれ持つ感性には価値があるんです。個人はもともとすごいパワーを持っているんです。

ただ残念ながら、そういった個人の持つ力が日の目を見ないことが多い気がしています。日本だと教育の影響もあって、自分のアイデアに対して意見されると萎縮してしまう人が多いと思います。でも、もっと個人を大事にしてほしいし、個人としてできることを私自身は見ていきたいと思っています。そこにちゃんと価値があると信じて、デザインに向き合っています。

歩くことが豊かな文化をつくる

Q5:渋谷の街への想いをお聞かせください。

渋谷は敷居が低い街だと思いますね。古い街じゃない分、ムーブメントが起きやすい。ガングロやチーマーと呼ばれる人が出てくるのは渋谷の街ですよね。キャストで異業種間のコミュニケーションが活発になるのと似ていると思います。

あとは、他の街にくらべると、つくりがすごくコンパクトです。新宿や池袋は大きいですよね。渋谷は駅から1キロ圏内にほとんどのものが詰まっていて、あまり駅のこっち側、あっち側というのを意識しないように思います。

Q6:渋谷の街への期待はありますか?

車を通さなくすると、面白いなと思いますね。人が歩くスペースが増えれば増えるほど、街って滞留時間が増えるわけですよ。そうすることで、コミュニケーションや文化が豊かになるんですね。

車で走っても、街を見る時間って、少ない。でも、街を歩くと、情報がたくさん入ってきます。走っていると見落としてしまうような、何気ない建物の2階部分とかも目に入ってきたりします。

ヨーロッパのは、車が通らない街が多い。車が道路を通れる時間が限られていて、石畳でできている道を歩くと、広場が出てくるような街のつくりになっているんですね。

デザインは、人にたくさん情報を見てもらうための戦略なんです。渋谷のまちは東急さんが主導で作っていると思いますが、そういった部分も意識して渋谷のまちづくりを進めてもらえたらと思いますね。

[取材を終えて…]則武さんのお話を聞いて、現代に求められるデザインと個人の持つ可能性について、考えさせられました。人それぞれが持つ感性を生かして、デザインすることによって、キラリと光るモノができるのではないか、と感じた次第です。ご協力いただいた則武さん、ありがとうございました!

取材協力:
◆co-lab 渋谷キャスト
http://co-lab.jp/
◆有限会社ペーパーバック
http://www.paperback.jp/
Instagram paperback.jp

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