映画解説者・中井圭の「今宵は渋谷で映画でも?」vol.26 スピルバーグが描く仮想現実『レディ・プレイヤー1』

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本コラムでは、「映画をもっと知りたくなる」をテーマに、渋谷で観ることができる作品をご紹介します。26回目は、2018年4月20日(金)公開の映画『レディ・プレイヤー1』です。本作は、TOHOシネマズ渋谷でご覧いただけます。

スピルバーグが描く仮想現実

CAP:(C)2018WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. ALL RIGHTS RESERVED

先日、日本でも劇場公開となった『ペンタゴン・ペーパーズ 最高機密文書』は、ニクソン政権によるベトナム戦争の戦況隠蔽に対する新聞報道をめぐって、国民の知る権利とはどのようにあるべきかを描いた社会派作品でした。

同作は、スティーブン・スピルバーグ監督が、トランプ大統領の思想に反発して、通常の制作期間ではありえないほど一気に作り上げた作品。スピルバーグの社会派の側面が強く打ち出されたものでした。一方、スピルバーグは同時期にもう1本、別の大作を制作していました。それが今回ご紹介する『レディ・プレイヤー1』です。

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本作は、アーネスト・クラインの小説「ゲームウォーズ」をスティーブン・スピルバーグが映画化したものです。

仮想現実が普及した近未来、世界を席巻するVRゲーム“オアシス”の創始者が亡くなります。彼の遺言は、“オアシス”に秘められたある課題をクリアすれば、“オアシス”の運営権を含む遺産をすべて引き継げるというもの。

莫大な価値を持つ“オアシス”の権利をめぐって、私利私欲しか考えていない悪徳企業を含んだすべてのプレイヤーが超難関ゲームのクリアを目指すことになるのです。

マニアも唸る「引用」の嵐

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まず、この映画を語る上で重要なのは、他の追随を許さないエンターテイメントからの引用の多さでしょう。“オアシス”はVR世界であるため、プレイヤーはどんなキャラクターにもなれる上に、どんなアイテムも利用することが可能です。そのため、現実世界で有名なキャラクターの数々が、使用許諾のある限り、大量に引用されています。

有名どころではスピルバーグが製作総指揮に入っていた『バック・トゥ・ザ・フューチャー』やアメリカのモンスター映画の代表格『キングコング』、ブラッド・バードの傑作アニメ『アイアン・ジャイアント』、日本の伝説的TVアニメ『機動戦士ガンダム』、世界中の怪獣映画に影響を与えた東宝『ゴジラ』シリーズ、大友克洋さんの漫画『AKIRA』をはじめ、とても追いきれないほどのキャラクターやアイテムが登場します。

また、映画そのもののオマージュも多く、『ターミネーター2』などは印象的なワンシーンの引用ですが、世界的に有名なスタンリー・キューブリックのあの傑作が、これでもかと言わんばかりに引用を超えたレベルで再現されているのは、映画ファンの心を掴むところ。本作は、次から次へと現れる世界的キャラクターや作品を見つけるだけでも楽しい作品に仕上がっています。

それでもやっぱり「王道」映画

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本作を観て感じるのは、ある日本のアニメ映画にどこか似ているということでしょう。その作品は、細田守監督の『サマーウォーズ』です。仮想現実“OZ”を舞台に少年少女の奮闘を描いた作品という意味でも共通点があるのはもちろんですが、それ以上に通ずるものを感じるのは、世界の連帯を描いている点です。

その視点により、『サマーウォーズ』は、マニアだけではなく一般的な大人の鑑賞に堪えうる作品に仕上がっていました。そして『レディ・プレイヤー1』も映画やアニメのマニア向け作品なのかと思わせるほどの引用の嵐で驚くものの、さすがはこれまで世界中を楽しませてきたスピルバーグ。万人が楽しめる内容のなかに、ある社会的テーマを包含させ、多くの観客に受け入れられる王道エンターテイメントに仕上げています。

マニア向けな映画はちょっと、と敬遠する渋谷の若者にこそ、本作のメッセージを是非受け取って欲しいと願います。

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▼Information
『レディ・プレイヤー1』
http://wwws.warnerbros.co.jp/readyplayerone/
4月20日(金)TOHOシネマズ渋谷ほか全国ロードショー 3D/2D/IMAX3D®/4D
(C)2018WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. ALL RIGHTS RESERVED

▼中井圭 プロフィール
兵庫県出身。映画解説者。WOWOW「映画工房」ニコ生公式「WOWOWぷらすと」「シネマのミカタ」TOKYO FM「TOKYO FM WORLD」などに出演中。「CUT」「STUDIO VOICE」「michill」「Numero TOKYO」「観ずに死ねるか」シリーズなどで映画評を寄稿。東京国際映画祭や映画トークイベントに登壇し、映画解説を展開。面白い人に面白い映画を観てもらって作品認知度を高めるプロジェクト「映画の天才」や物事に関心のある人を増やすPJ「偶然の学校」などを主催。

◆vol.25 恐怖のゲーム再び『ジュマンジ/ウェルカム・トゥ・ジャングル』
◆vol.24 報道の自由を“今こそ”問う『ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書』
◆vol.23 原作ファンも唸る最新作『ちはやふる -結び-』

※記事の内容は公開時点の情報です。価格等の情報については変更している可能性がありますのでご了承ください。
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