映画解説者・中井圭の「今宵は渋谷で映画でも?」vol.31 人類の未来に思いを馳せる『ジュラシック・ワールド 炎の王国』

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本コラムでは、「映画をもっと知りたくなる」をテーマに、渋谷で観ることができる作品をご紹介します。31回目は、2018年7月13日(金)公開の映画『ジュラシック・ワールド 炎の王国』です。本作は、TOHOシネマズ渋谷でご覧いただけます。

「恐竜」映画の最高峰

(C)Universal Pictures

90年代、筆者が心から魅了された娯楽作品のひとつが、スティーブン・スピルバーグ監督作『ジュラシック・パーク』(93)でした。80年代と比較しても圧倒的に進化したVFXにより、生きてそこに存在しているとしか思えない恐竜の質感と重量感、動きが驚異的で、興奮を抑えることができなかったのを思い出します。

同シリーズはその後、『ロストワールド/ジュラシック・パーク』(97)、『ジュラシック・パークIII』(01)と続き、映画史に残る大ヒットシリーズとなりました。しかし、3作目を最後に本シリーズは、しばらく沈黙することになります。

それから14年が流れ、突然復活したのが、本シリーズの続編『ジュラシック・ワールド』(15)でした。90年代と比べて映像技術の進化は著しく、ほぼすべての表現がCGによって実現できる時代に描かれた恐竜たちは、従来では不可能だったダイナミックかつ繊細な映像描写によって、激しいアクション性と生き物としてのリアリティを獲得。現代の大ヒット作品として復活を遂げたのです。

そして、そんな新時代の幕開けとなった『ジュラシック・ワールド』シリーズの第2弾がこのたび製作されました。それが今回ご紹介するシリーズ最新作『ジュラシック・ワールド 炎の王国』です。

単なるアクションパニック映画ではない

(C)Universal Pictures

恐竜たちが傲慢な人間たちの管理を打ち破った前作から3年が経過し、だれからも干渉されることなく恐竜の楽園と化したイスラ・ヌブラル島が本作の舞台となります。

人間の手を離れて静かに過ごしていた恐竜たちですが、島の休火山が活性化したことで逃げ場を失い、再び絶滅の危機を迎えます。その状況を前に、人間が恐竜たちの生命をどのように考え、どう動いていくのかが本作の焦点になるのです。

(C)Universal Pictures

この『ジュラシック・ワールド』シリーズの特長は、なんといっても従来になかった、恐竜と人間の友情を描いた点です。前作で、知的で獰猛なラプトルたちの調教をしていたオーウェン(クリス・プラット)は、本作でもラプトルと心を通わせ、コミュニケーションを取ります。

その結果、これまでは常に争い続けていた人間と恐竜という図式から、人間と恐竜の共闘という新しい構図を生み出しました。

(C)Universal Pictures

本作でオーウェンたちは、危険極まりない恐竜たちが溢れる島のどこかに今も生きているラプトルのリーダー、ブルーを探して、火山の噴火までに安全な場所に避難させるというミッションを背負います。つまり、本作では敵としての恐竜という側面よりも、友としての恐竜という面が強く打ち出されます。

そしてもうひとつ、本作が『ジュラシック・パーク』の系譜から更なる一歩を踏み出したと感じさせるのが、作品に漂う道義的な複雑さと社会に対する批評性でしょう。本シリーズは、もちろん恐竜アクションパニック映画として見事なのですが、それと同時に必ず描かれ続けてきたのが、人間の傲慢さと生命に対する敬意です。

人間の技術によって再びこの世界に登場した恐竜たちが、人間にしっぺ返しをするのはお約束ですが、それ以上に、人間が生命を生み出す、ある意味で神の領域に到達したときに、その生命とどのように向き合っていくのかが問われているのです。

本作では、人間が勝手によみがえらせたものの、再び絶滅の危機が迫った恐竜たちを自然の摂理として受け入れていくのか、あるいは新しい世界の始まりとして、彼らを救う選択をするのかを常に迫られます。

本作は、現代社会において、医学や遺伝子工学の進歩が生み出すこれからの世界を想起させ、その選択は未来の社会の在り方そのものを我々に考えさせるのです。単なるアクションパニック映画ではなく、未来の人類にまで思いを馳せる本作を、ぜひ渋谷の皆様にもご覧いただきたいのです。

(C)Universal Pictures

▼Information
『ジュラシック・ワールド 炎の王国』
http://www.jurassicworld.jp/
7月13日(金)TOHOシネマズ渋谷他全国公開

▼中井圭 プロフィール
兵庫県出身。映画解説者。WOWOW「映画工房」ニコ生公式「WOWOWぷらすと」「シネマのミカタ」TOKYO FM「TOKYO FM WORLD」などに出演中。「CUT」「STUDIO VOICE」「michill」「Numero TOKYO」「観ずに死ねるか」シリーズなどで映画評を寄稿。東京国際映画祭や映画トークイベントに登壇し、映画解説を展開。面白い人に面白い映画を観てもらって作品認知度を高めるプロジェクト「映画の天才」や物事に関心のある人を増やすPJ「偶然の学校」などを主催。

◆vol.30 オタク青年の「社会」を描く『ブリグズビー・ベア』
◆vol.29 いじめに立ち向かう少年の物語『ワンダー 君は太陽』
◆vol.28 30年外に出なかった男の「美」について『モリのいる場所』

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