映画解説者・中井圭の「今宵は渋谷で映画でも?」vol.42 ディズニーが問う現代のコミュニケーション『シュガー・ラッシュ:オンライン』

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本コラムでは、「映画をもっと知りたくなる」をテーマに、渋谷で観ることができる作品をご紹介します。42回目は、2018年12月21日(金)公開の映画『シュガー・ラッシュ:オンライン』です。本作は、TOHOシネマズ渋谷でご覧いただけます。

「ネットの裏側」から見えるもの

ここ数年、ディズニー映画は大きな変化を遂げています。かつての典型的かつ王道なハッピーエンドを基調とした物語を描いてきたディズニーは、現代的視点を入れ込むことで、ブランド自体を新しく更新しています。

今回ご紹介する『シュガー・ラッシュ:オンライン』も、そんな新しいディズニーを象徴するような現代的なアニメーション作品に仕上がっています。

(C)2018 Disney. All Rights Reserved.

本作は、2013年に日本で公開されたアニメ映画『シュガー・ラッシュ』の続編です。前作『シュガー・ラッシュ』は、アーケードゲームのキャラクターたちがゲームセンターの営業時間後に自由に動き出すもので、アーケードゲームのひとつ「フィックス・イット・フェリックス」の悪役ラルフの孤独と、彼が交流することになるアーケードゲーム「シュガー・ラッシュ」のキャラクター、ヴァネロペの活躍を描いています。

この映画は悪役を主人公に据えて、そこにスポットライトをあてることで、悪を悪としてみなしてきたこれまでの物の見方を一新し、物事の多面性を描くことに成功した、子ども以上に大人に響く作品だったと言えます。

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新作『シュガー・ラッシュ:オンライン』は、ヴァネロペが活動するアーケードゲーム「シュガーラッシュ」のゲーム筐体のハンドルが破損したことで、物語が動きます。

ハンドルが故障したままだとゲームセンターから撤去されてしまうため、ラルフとヴァネロペは、Wi-Fiを通じてインターネットの世界に入り込み、オークションサービスのe-bayを通じて、ハンドルを手に入れようと試みます。

オークションの仕組みを知らないふたりは、そこで高額を投じてしまった結果、支払いのために急遽お金を稼がなければならなくなるのです。

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とてもポップな映画です。今回は、インターネットの可視化がとても楽しい。我々がスマホやPCを通じて見ている検索エンジンや動画サイト、インスタグラム、ツイッターなどはもちろん、バナー広告までが、立体的に存在しているのがユニークです。特に、インターネットあるあるを立体的な世界の出来事として表現することで、ウィットに富んだ笑いを提供します。

しかし、本作の最大の魅力はポップさではなく、大人に刺さるメッセージ性の深みでしょう。

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本作が実に大人向けだと感じるのは、前作『シュガー・ラッシュ』同様、従来型のディズニーの物語から逸脱した、テーマの現代性が大きい。ハンドルを求めてインターネットの世界にやってきたふたり。変化を好むヴァネロペは次第に革新的かつ刺激の大きいインターネットの世界にのめり込んでいきます。

一方で、ラルフはできるだけ早くハンドルを手に入れて、元のアーケードゲームの世界に戻って、親友ヴァネロペとの日々を過ごしたいと考えています。互いを信頼し大切にしているふたりでありながら、考え方の相違によってすれ違っていく展開は、我々が生きる現実世界においても見受けられるものです。

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本作は、そんなすれ違いをどのような結論に導き出すのかという視点において、極めて現代的といえるでしょう。むしろその現代性は、これからの時代を生きていく我々に大きな指針を与えるもの。従来のディズニー的エンディングとは全く違う落着点と言えるかもしれません。

本作をぜひ渋谷の若い方々にご覧いただきたいと思います。それは友情のあり方ついて、再考するヒントになり得るものだからです。コミュニケーションが複雑になった現代において、新しいディズニーが提示するひとつのメッセージを是非受け取って欲しいのです。

(C)2018 Disney. All Rights Reserved.

▼Information
『シュガー・ラッシュ:オンライン』
https://www.disney.co.jp/movie/sugarrush-ol.html
12月21日(金)全国公開

▼中井圭 プロフィール
兵庫県出身。映画解説者。WOWOW「映画工房」ニコ生公式「ぷらすと by Paravi」「シネマのミカタ」TOKYO FM「TOKYO FM WORLD」などに出演中。「CUT」「STUDIO VOICE」「POPLETA」「Numero TOKYO」「観ずに死ねるか」シリーズなどで映画評を寄稿。東京国際映画祭や映画トークイベントに登壇し、映画解説を展開。面白い人に面白い映画を観てもらって作品認知度を高めるプロジェクト「映画の天才」や物事に関心のある人を増やすPJ「偶然の学校」などを主催。

◆vol.41 地獄の刑務所を生き抜く『暁に祈れ』
◆vol.40 「世界の塚本」に畏怖する『斬、』
◆vol.39抑圧を生きる男女の物語『生きてるだけで、愛。』

※記事の内容は公開時点の情報です。価格等の情報については変更している可能性がありますのでご了承ください。
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