映画解説者・中井圭の「今宵は渋谷で映画でも?」vol.47 音声の向こう側へ『THE GUILTY/ギルティ』

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

本コラムでは、「映画をもっと知りたくなる」をテーマに、渋谷で観ることができる作品をご紹介します。47回目は、2019年2月22日(金)公開の映画『THE GUILTY/ギルティ』です。本作は、渋谷ユーロスペースでご覧いただけます。

音声だけで進行する、新感覚サスペンス

(C)2018 NORDISK FILM PRODUCTION A/S

世界的に知られているデンマーク映画は、癖があります。最も知られるところでは、ラース・フォン・トリアー監督の『ダンサー・イン・ザ・ダーク』やスサンネ・ビア監督の『未来を生きる君たちへ』など。重苦しさを伴い、作品の衝撃が世界中の映画人たちを揺るがし続けています。そして、また1本、新しいデンマーク映画が世界を席巻しました。『THE GUILTY/ギルティ』です。

緊急指令室にかかってきたある緊急電話にフォーカスするこの作品。電話をかけてきた女性は、夫に誘拐されて車でどこかに連れて行かれていることを夫にバレないように訴えます。その電話を受けたオペレーターのアスガーは電話を頼りに、どうにかして彼女を救うべく奮闘。しかし、事件は思わぬ方向に進んでいくのです。

(C)2018 NORDISK FILM PRODUCTION A/S

本作はなんといっても、その特殊な設定に驚かされます。なぜならこの物語は、緊急電話の音声だけで進行していくからです。映画の画面は、緊急指令室から一歩も出ることなく、誘拐されている女性と通話しているアスガーの様子を捉え続けます。

電話の向こう側の様子は画面に映りません。観客は女性の声の様子や音、話の内容で情景を推測するしかないのです。この設定は絶妙で、卓越した脚本と組み合わさることで、予想を覆す仕掛けを実装することに成功しています。

(C)2018 NORDISK FILM PRODUCTION A/S

さらにこの映画は、音声から向こう側を推測する設定とそれを支える脚本の上手さに加えて、アスガーが抱えたある秘密の扱い方に見どころがあります。それが本作を一段上のレベルに高め、世界的な評価にもつながっているのです。

特殊なギミックを用いて観客を惹きつけるサスペンスの体裁を取りながら、思いもよらない深みに物語が収斂する本作。これは、重荷を抱えるアスガーが自分自身と向き合う人間ドラマなのです。

映画を観慣れた渋谷の皆さんも、確実に驚くでしょう。しかも、その驚きはすぐさま深い余韻へと転調することは間違いありません。必見の一本です。

(C)2018 NORDISK FILM PRODUCTION A/S

▼Information
『THE GUILTY/ギルティ』
https://guilty-movie.jp/
2月22日(金)新宿武蔵野館/ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国公開

▼中井圭 プロフィール
兵庫県出身。映画解説者。WOWOW「映画工房」ニコ生公式「ぷらすと by Paravi」「シネマのミカタ」TOKYO FM「TOKYO FM WORLD」などに出演中。「CUT」「STUDIO VOICE」「POPLETA」「Numero TOKYO」「観ずに死ねるか」シリーズなどで映画評を寄稿。東京国際映画祭や映画トークイベントに登壇し、映画解説を展開。面白い人に面白い映画を観てもらって作品認知度を高めるプロジェクト「映画の天才」や物事に関心のある人を増やすPJ「偶然の学校」などを主催。

◆vol.46 月に挑んだ男の孤独『ファースト・マン』
◆vol.45 90年代は「今」に続く『チワワちゃん』
◆vol.43 「2018年・中井的ベスト“ナカデミー賞”」5作品を発表!

※記事の内容は公開時点の情報です。価格等の情報については変更している可能性がありますのでご了承ください。
  • このエントリーをはてなブックマークに追加