映画解説者・中井圭の「今宵は渋谷で映画でも?」vol.49 ホワイトデーにオススメ! 人生に楽しく響く恋愛映画3選

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

本コラムでは、「映画をもっと知りたくなる」をテーマに、渋谷で観ることができる作品をご紹介します。49回目は、特別編として、ホワイトデーにオススメの恋愛映画3本をご紹介したいと思います。

ホワイトデーが変化している現代にこそ観たい“恋愛映画”とは?

 バレンタインと同様に、近年は、単なる恋愛のイベントから友情や自分自身も祝うイベントに進化したホワイトデー。そんな3月14日に観るべき映画は、恋愛という視点はありつつも、カップルだけではなく異性や同性の友達同士で観ても楽しく、ひとりで観ても自分自身を見つめ直すヒントになるものが好ましいと筆者は考えました。今回ピックアップした3作品は、いずれもその条件を満たす秀逸な映画ばかり。人であふれた渋谷の街から自宅に戻ったら、カップルはもちろん、友達、おひとりでもご覧頂き、それぞれにとっての素晴らしいホワイトデーの一助になれば幸いです。

 『ラブ・アゲイン』 高校時代から付き合い、長年連れ添った妻に突然離婚を宣言された、真面目で不器用な中年男性キャルが、バーで出会った女たらしのイケメン男性ジェイコブから女性の口説き方を学ぶ過程で、自分にとって本当に大切なものが何かに気づくというラブコメ作品。
 本作が素晴らしいのは、スティーブ・カレル演じるキャルとその家族がそれぞれ抱えた問題が見事に収斂する脚本の妙。特に、終盤、主要登場人物が全て揃うカルの自宅で起こるカタストロフィに大笑いした後の、キャルの長男の卒業式でのスピーチが感動的。その誠実な言葉に、誰かを愛した初々しい気持ちがよみがえるでしょう。なお、余談ですが、アカデミー賞で注目を集めた『ラ・ラ・ランド』のライアン・ゴズリングとエマ・ストーンが、本作で先んじてカップルを演じていたのにも注目してください。

 『ビューティー・インサイド』 本作は、毎日、眠りから覚めると顔や年齢、性別までもが変わってしまう家具デザイナーの男性が、家具屋で働く女性に恋をするというファンタジックな韓国の恋愛映画です。
 人は見た目じゃないかもしれないけれど、記憶と性格以外のすべてが変わってしまったら、はたして相手を愛し続けられるのか。寝て起きたら外見が変わるという特殊な設定を活かして、何をもって人を好きになるのか、という恋愛の核心に臆することなく触れようとする意欲作です。現実世界ではありえない作品世界を一切の違和感なく描いた、透明感あふれる画面と静謐なトーンは、落ち着いたホワイトデーの夜に観るのに相応しいでしょう。また、本作は主人公を123人で演じるという前代未聞のキャスティングが面白く、あるシーンで日本から上野樹里さんが参加しているので探してください。

 『恋愛小説家』 本作は、極端な潔癖症の上、差別的で人間嫌いという気難しい恋愛小説家、メルヴィンが、行きつけのレストランで働くシングルマザーのウエイトレス、キャロルに心を奪われて、彼女に振り向いてもらうために少しずつ自分自身を変えていくというラブストーリーです。
 偏屈なメルヴィンの内面変化が不器用で微笑ましいコメディタッチの本作ですが、その背景に彼のこれまでの孤独な人生が垣間見えて胸を締め付けます。それこそがメルヴィンを演じたジャック・ニコルソンの演技の素晴らしさでしょう。彼と、キャロルを演じたヘレン・ハントの、良い意味で絶妙に噛み合わない掛け合いが完璧で、名優同士の演技合戦としても楽しめる作品です。終盤、キャロルの母親が投げかける「理想の恋人なんてどこにもいない」というセリフは、ホワイトデーを過ごす人々に深く響くに違いありません。

 上述した3本の素晴らしい恋愛映画は、恋愛という枠を超えて、人がどう生きるべきかを問いかける人間ドラマです。バレンタインやホワイトデーが変化している現代だからこそ、恋愛だけではなく人生に響く作品を観るのが素敵だと思います。

▼中井圭 プロフィール
兵庫県出身。映画解説者。WOWOW「映画工房」ニコ生公式「ぷらすと by Paravi」「シネマのミカタ」TOKYO FM「TOKYO FM WORLD」などに出演中。「CUT」「STUDIO VOICE」「POPLETA」「Numero TOKYO」「観ずに死ねるか」シリーズなどで映画評を寄稿。東京国際映画祭や映画トークイベントに登壇し、映画解説を展開。面白い人に面白い映画を観てもらって作品認知度を高めるプロジェクト「映画の天才」や物事に関心のある人を増やすPJ「偶然の学校」などを主催。

※記事の内容は公開時点の情報です。価格等の情報については変更している可能性がありますのでご了承ください。
  • このエントリーをはてなブックマークに追加