映画解説者・中井圭の「今宵は渋谷で映画でも?」vol.53 映画新時代の幕開け『アベンジャーズ/エンドゲーム』

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本コラムでは、「映画をもっと知りたくなる」をテーマに、渋谷で観ることができる作品をご紹介します。53回目は、現在公開中の映画『アベンジャーズ/エンドゲーム』です。本作は、TOHOシネマズ渋谷でご覧いただけます。

尋常ではないカタルシスの理由

2008年5月2日、映画におけるマーベル・スタジオ作品群であるMCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)1作目となる『アイアンマン』が北米で公開されました。6億ドルにせまる『アイアンマン』の大ヒット。そこから、MCUの快進撃は始まりました。

あれから11年。MCU22作目となる『アベンジャーズ/エンドゲーム』は、5月13日現在で興行成績が24億8549万ドルを突破。歴代興行記録2位だった『タイタニック』を抜き去り、いよいよ1位の『アバター』の背中が見えてきました。

(C)2019 MARVEL

本作は、徹底的な秘密主義を貫いており、実際に何を言ってもネタバレになるということで、これまで一切の解説ができませんでしたが、今回は本作がもたらした圧倒的なカタルシスと映画史に与える意味について、ネタバレせずにほんの少しだけ見解を述べたいと思います。

本作が劇中もたらし続けた極上のカタルシスは、過去にないほどの体験でした。それは、MCUという連続作品群の登場に深く関係していると考えます。映画史を振り返ってみても、11年間というスパンで、ひとつの連続的な線の上に載った作品群を22作品描くことは、ほぼありませんでした。

たとえば、『007』シリーズは現在24作品描かれており、数ではMCUを上回っています。ですが、スパンはより長く、特に連続性という意味では、ジェームズ・ボンド役が変わるたびに物語は一新されていました。

MCUは毎年およそ2作品が11年にわたって紡ぎ続けられたことで、映画を観続けている我々の人生に自然と入り込んでいました。つまり我々は、兄弟や姉妹と共に育ったかのように、MCUと共に生きて年月を重ねてきたのです。

だからこそ、MCUの個々の作品が人生の思い出のように積み上がり、その集大成が『アベンジャーズ/エンドゲーム』として、ことごとくその思い出と共に回収されていったのです。ここに尋常ならざるカタルシスと映画体験が生まれるのは必然です。そのクライマックスは、家族や親友の冠婚葬祭のような感覚にまで到達しました。

(C)2019 MARVEL

そして、本シリーズはもうひとつ、映画のありかたに一石を投じました。それは、映画の連ドラ化です。現在「ゲーム・オブ・スローンズ」や「ストレンジャー・シングス 未知の世界」など、海外ドラマが全盛期を迎えています。

アメリカにおけるドラマシリーズは、かつては映画よりも格下という位置づけでしたが近年は状況が大きく変わりました。潤沢な予算の元、劇場公開作品以上のクオリティと連続性によってなせる細やかな描写が、視聴者に与えるインパクトは大きく、中には映画を超えていると感じるものすらあります。2時間で完結する物語では表現不可能な描写を積み上げているのが、現在の良質な海外ドラマなのです。

ですが、MCUはそんな良質な海外ドラマすら凌駕しています。なぜなら、MCUは映画における連ドラ化を体現しているからです。それは、かつてないほどの新しい体験です。

映画は、いよいよ新時代に突入しました。海外ドラマのように連ドラ化した作品と2時間で完結する通常作品の併存によって、映画を評価する手法も多少変化せざるを得ないでしょう。

無論、観客の映画との向き合い方も少しずつ変わっていくのではないでしょうか。その転換点となったのがMCU、そして『アベンジャーズ/エンドゲーム』だと、後に語られるのかもしれません。

▼Information
『アベンジャーズ/エンドゲーム』
https://marvel.disney.co.jp/movie/avengers-endgame.html
TOHOシネマズ渋谷ほか全国ロードショー

▼中井圭 プロフィール
兵庫県出身。映画解説者。WOWOW「映画工房」ニコ生公式「ぷらすと」「シネマのミカタ」TOKYO FM「TOKYO FM WORLD」などに出演中。「CUT」「STUDIO VOICE」「POPLETA」「Numero TOKYO」「観ずに死ねるか」シリーズなどで映画評を寄稿。東京国際映画祭や映画トークイベントに登壇し、映画解説を展開。面白い人に面白い映画を観てもらって作品認知度を高めるプロジェクト「映画の天才」や物事に関心のある人を増やすPJ「偶然の学校」などを主催。

◆vol.52 若気の至りのリアル『アメリカン・アニマルズ』
◆vol.51 壮大な物語のはじまり『キングダム』
◆vol.50 深い余韻を味わう『希望の灯り』

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