MARUZEN&ジュンク堂書店 渋谷店に聞く、「梅雨に読みたい、雨の描写が印象的な本3冊」

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東急百貨店本店に、渋谷最大級の書店&文具店があるのはご存知ですか?「MARUZEN&ジュンク堂書店 渋谷店」は丸善とジュンク堂のダブルネーム1号店。 蔵書数はなんと80万冊以上!さらに文房具の販売もしています。
そんなたくさんの本の中から、プロ中のプロである書店員さんがザ・スクランブルユーザーに読んでもらいたい本をピックアップ。 今回は、梅雨に読みたい、雨の描写が印象的な本3冊を、社会書担当の中田英志郎さんに紹介してもらいました。

1.『言の葉の庭』

映画『君の名は。』で知られる新海誠監督が手がけた2013年公開の短編映画、『言の葉の庭』をノベライズ化した一冊。
靴職人を目指す、高校生のタカオ。ある雨の日、1限目をサボって、とある庭園で靴のデザインを考えていると、昼間からビールを飲む20代半ばの女性ユキノに出会う。
その日から雨の降った午前中、庭園での二人の交流がはじまるが、ユキノはタカオに重大な秘密を話せないでいる……。

「映画をご覧になっている人が多い作品かと思います。
しかし小説版では、映画のその後や、主人公以外の登場人物のドラマなど、映画では語られなかったストーリーが楽しめます」

雨が物語のキーポイントとなっている『言の葉の庭』。雨は鬱陶しさの象徴になることが多いが、この作品ではむしろ人生を好転させるターニングポイントとして描いている作品なのでは、と中田さん。

「男子高校生とアラサーの女性が、お互い家庭環境や職場の人間関係など、どうにもできない葛藤を抱えている雨の日、行動パターンを変えたことで、忘れ得ぬ出会いを果たしています。
気分が落ち込みがちな雨の日や悩んでいるとき。いつもと違う行動をとってみることで、何か起こるかもしれない、と前向きな気持ちになれる一冊です」

『言の葉の庭』角川文庫 734円(税込) 新海 誠 (著)

2.『とにかくうちに帰ります』

全六篇の小説集の表題作、『とにかくうちに帰ります』。
ニュースでも報じられるほどの豪雨の日。帰宅困難者になってしまった4人が、どうにかこうにか家に帰るまでが描かれた物語。

「著者の津村記久子さんは働いている人を題材にすることが多く、『とにかくうちに帰ります』も、埋立地の中にある会社で働く男女3人と、その近くにある塾に通う大人びた小学生が登場。
4人ともちょっとした事情で、最寄りの交通機関まで行ける最後のバスに乗れず、歩いて帰る羽目になってしまうこと、その豪雨の道のりを淡々と描いています」

交通機関が麻痺している豪雨の日。
雨が止むまで会社や塾で待たずに、なぜ歩いてまで今日中に家に帰らないといけないのか。その背景にあるそれぞれの目的が、いつもは交わらない人との交流を生む。

「豪雨の中を歩いて帰る、という非日常的な行動のおかげで、4人が覗かせる普段とは違った顔がとても人間臭い。人にはいろんな顔や事情があることを改めて思い知らされます。普段付き合っている人にも、見たことのない一面があるかもしれない、想像するのが楽しくなる一冊です」

『とにかくうちに帰ります』新潮社 497円(税込) 津村 記久子(著)

3.『羅生門・鼻』

ほとんどのアラサーが教科書で読んだことのある『羅生門』。しかし大人になってから読む名作は、小学生の頃に感じた気持ちとはまた別の感情が生まれるので、ぜひ再読してほしいと中田さん。

「名作で雨といえば、『羅生門』。

ある日の暮方の事である。一人の下人が、羅生門の下で雨やみを待っていた。

出だしにしか雨の描写がないのですが、これだけで雨が物語の舞台装置として効果的になり、物語全体を鬱々とした雰囲気で覆っています。
日本史上一番文章が上手いとも評されている芥川龍之介のスマートさが窺い知れる一文なのでは」

登場する人物は、雨宿りしている下人と羅生門の建物の中にいる老婆のふたりだけ。
老婆が羅生門で何をしていたか覚えているだろうか。その老婆の行動が下人の中に眠っていた感情を呼び覚ましている。

「12ページという短い文章の中、このふたりのやりとりを通して、人間が悪い方向へ向かってしまう心理の移り変わりを描ききっている。大人になったからこそ、人間本来の心の暗さに恐怖を覚えるのでは。短いので待ち合わせ中に読むのもおすすめですが、雨の夜も最高だと思います」

『羅生門・鼻』新潮社 400円(税込) 芥川龍之介(著)

「MARUZEN&ジュンク堂書店 渋谷店」
東京都渋谷区道玄坂2-24-1 渋谷・東急百貨店本店7階
TEL 03-5456-2111
営業時間10:00~21:00
https://honto.jp/store/detail_1570061_14HB320.html
Twitter: @junku_shibuya https://twitter.com/junku_shibuya
LINE@: 「MARUZEN&ジュンク堂書店 渋谷店」で検索
※「hontoカード」、「Pontaカード」「dカード」利用可能

紹介者 「MARUZEN&ジュンク堂書店 渋谷店」社会書担当 中田英志郎

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この記事を書いたライター
高橋優璃
高橋優璃
Yuri Takahashi
出版社の女性向けメディアにてWEBディレクターとしてSNSやビューティ、占いコンテンツなどを担当。 その後独立し、女性向けWEB媒体のエディター、雑誌のライター、大手企業のカタログエディットなどを手掛ける。
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