映画解説者・中井圭の「今宵は渋谷で映画でも?」vol.55 本物のアクションがここに『ザ・ファブル』

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本コラムでは、「映画をもっと知りたくなる」をテーマに、渋谷で観ることができる作品をご紹介します。55回目は、6月21日(金)公開の映画『ザ・ファブル』です。本作は、TOHOシネマズ渋谷でご覧いただけます。

岡田准一演じる「伝説の殺し屋」

©2019「ザ・ファブル」製作委員会

岡田准一さんは、職人肌です。ジャニーズ事務所のアイドルグループ、V6のメンバーとして知られていますが、俳優業に進出してから、持ち前のストイックさが多くの人に知られるようになりました。

とにかくこだわり屋であり、気になったら突き詰めるタイプ。その一端を垣間見せたのは、撮影への取り組みでしょう。

例えば、岡田さんは『追憶』(2017年)という作品で、黒澤組の撮影助手をはじめ、降旗康男監督作品の名カメラマンとして知られる木村大作さんに師事。実際に本編で使用されたシーンを撮影するなどしています。

さらに木村さんの監督作である『散り椿』(2018年)では、その木村さん本人が役者として出演し斬られるシーンを岡田さんが撮影しています。

そんな岡田准一さんですが、俳優業においては、とりわけアクションに対する取り憑かれたような姿勢が有名です。いくつかのアクション映画への出演を通じて実践的な格闘技を学び、数多いる俳優の中でも最もキレのあるアクションを演じることができる役者のひとりへと進化しました。

その実力がいかんなく発揮されたのが、今回ご紹介する『ザ・ファブル』です。どんな相手でも6秒以内に殺すと言われる伝説の殺し屋“ファブル(寓話)”。この役を彼が演じていますが、この6秒以内に殺す伝説的な強さを本作で存分に披露しているのです。

本作は、そんな伝説の殺し屋が殺しを封印して日常を過ごすというシチュエーションも相まって、驚くほどコメディタッチではあるものの、徐々にシリアスさが比重を高めていく展開。コメディパートの笑いの要素が強ければ強いほど、アクションパートのハードさが作品の持ち味を高める巧みな構造になっています。

©2019「ザ・ファブル」製作委員会

とりわけ本作はアクションシーンが秀逸です。アクションを売りにしている映画でも、往々にしてカメラワークで演出することは少なくありませんが、本作は違います。本物の動きだけが与えることのできる迫力を存分に披露しています。その中心にいるのが、岡田さんなのです。

岡田さんは本作において、主演のみならず戦闘シーンをコーディネートするファイトコレオグラファーを努めています。つまり、彼がデザインしたアクションシーンを彼自らが演じているのです。そこには彼の、これまで散々見せつけてきた強烈なこだわりそのものが詰まっています。

©2019「ザ・ファブル」製作委員会

さらに本作は、カルトな傑作『処刑人』(2001年)におけるウィレム・デフォーの名シーンをはじめ、クエンティン・タランティーノ監督の『キル・ビル』(2003年)、そして近年であればキアヌ・リーブス主演の『ジョン・ウィック』(2015年)の1対多数で繰り広げた近接銃撃格闘戦、通称“ガンフー”にオマージュを捧げるなど、殺し屋家業の名作を次々と踏襲した表現をしています。殺し屋アクション映画として本物であることを高らかに宣言していると言えます。

岡田さんはこの先どこにたどり着くのか。その一端は、本格的なアクションに染まった本作に現れていると言っても過言ではないでしょう。

▼Information
『ザ・ファブル』
http://the-fable-movie.jp/
6月21日(金)、TOHOシネマズ渋谷ほか全国ロードショー

▼中井圭 プロフィール
兵庫県出身。映画解説者。WOWOW「映画工房」「ぷらすと」「シネマのミカタ」TOKYO FM「LOVE CONNECTION」などに出演中。「CUT」「STUDIO VOICE」「POPLETA」「Numero TOKYO」「観ずに死ねるか」シリーズなどで映画評を寄稿。東京国際映画祭や映画トークイベントに登壇し、映画解説を展開。面白い人に面白い映画を観てもらって作品認知度を高めるプロジェクト「映画の天才」や物事に関心のある人を増やすPJ「偶然の学校」などを主催。

◆vol.54 ダメ人間と自由について『町田くんの世界』
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