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「正解がないからおもしろい」 “渋谷菌友会”が「発酵」を実験する理由

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2017/8/15更新

こんにちは、ライターの根岸達朗です。                     
みなさんは「発酵食品」好きですか?味噌や醤油などの調味料をはじめ、納豆やぬか漬け、ヨーグルトやチーズ、日本酒やビールまで、ありとあらゆる発酵食品が暮らしに根付いていますよね。僕はそんな発酵食品を自分でつくったり、食べたりするのが大好きなんですが、実はこんなところにも発酵好きの方々が集結していました。
その名も・・・

渋谷 菌活会

渋 谷 菌 友 会。

これは渋谷道玄坂で3Dプリンタやレーザーカッターが使えるデジタルものづくりカフェ「FabCafe Tokyo」の運営もしているクリエイティブ企業「ロフトワーク」で、2016年2月に立ち上がった有志のプロジェクト。菌に興味のある社内外のメンバー(料理人から高校生まで!)が毎月一回集まって、発酵にまつわるさまざまな食の「実験」を行っています。

▼ロフトワーク
https://www.loftwork.jp/

今回はその中心メンバーの皆さんにお集まりいだたき、この活動の魅力や発酵のおもしろさなどについて話を聞いてきました!

渋谷 菌活会 お話を聞かせてくれた皆さん。左から、初代部長の浦野奈美さん(ロフトワーク)、発酵料理人の森本桃世さん、二代目部長の浅沼由美さん(ロフトワーク)。

「発酵」は古来のバイオテクノロジー

渋谷 菌活会

「おもしろそうな雰囲気に引き寄せられてやってまいりました。今日はよろしくお願いします! まずは初代部長の浦野奈美さんにお尋ねします。今メンバーはどのくらいいるんですか?」

「90人くらいです。Facebookグループで情報共有しているんですが、社内外の人が参加していて年齢も職種もさまざまです。みんなで『ぬか漬け』をつくってみようとか、万能調味料の『醤(ひしお)』をつくってみようとか、毎回テーマを決めていろんな発酵食品を仕込んでいるんです」

渋谷 菌活会 醤油に米麹、豆麹、麦麹を混ぜて発酵させるだけのシンプルな発酵調味料「醤」。材料を混ぜたら、あとは2週間おくだけで完成。これだけで白ごはん食べられちゃうような、濃厚な旨味が特徴!
渋谷 菌活会 米ぬかを発酵させたぬか床に野菜を入れてつくる「ぬか漬け」。毎日ぬかを手でコネコネかき混ぜることで手の常在菌がぬか床に移り、発酵が促進する(いいぬか床になっておいしい漬物が食べられるってこと!)。

「へえ〜みんなで同じものをつくっているんですね」

「はい。材料もすべて同じものを使っています。でも、不思議なことにみんなぜんぜん仕上がりが違ったんですよね。特に手入れが必要なぬか漬けは人によってかなり違いが出ていて、それがおもしろかったです。ペットみたいに感情移入してる人とかもいました(笑)」

「ぼくもやってるので、その感覚わかります(笑)。ほかにはどんな活動を?」

「昔ながらの製法で自然酒づくりをしている千葉の造り酒屋『寺田本家』の寺田優さんに来ていただいて、日本酒とチーズの組み合わせを味わうワークをしたり、世界的に活躍するフードアーティストのZack Denfeldさんとノルウェーの発酵サーモンや台湾の豆腐ようなど、世界の発酵食品を食べくらべたりもしました。ゲストが来る回は、渋谷で働いているほかの会社のメンバーが参加することもあるのですごく盛り上がります」

渋谷 菌活会

「いいですね〜。ところで、会社のなかで『渋谷菌友会』というのはどういう位置づけなのですか? ロフトワークさんはバイオテクノロジーに関するクリエイティブにも力を入れていると聞きます」

「はい。うちの会社には『FabCafe MTRL』というクリエイティブラウンジがあり、そこにバイオテクノロジーの実験や研究が可能な『バイオラボ』があるんです。ロフトワークは社員が“実験する姿勢”を推奨していることもあり、ここからサイエンスに関心のある人たちがさまざまな実験をする『バイオクラブ』というコミュニティができました。『渋谷菌友会』はそうした文脈からも影響を受けて生まれた活動です」

渋谷 菌活会 バイオクラブのウェブサイト→http://www.bioclub.org/

「へええ。会社でいろんな実験ができるって、楽しそうだなあ」

「バイオテクノロジーというと先端的なイメージもありますが、微生物の力を人間が役立つように利用していくという点では、日本人にとっての発酵も古来のバイオテクノロジーなんですよね。微生物の活動というミクロな世界にフォーカスして、さまざまな実験をしていくことで、そこから得られる気付きをクリエイティブな表現につなげていきたいと考えています」

渋谷 菌活会

「この活動を始めるきっかけになったのは、毎年開催している会社のクリスマスパーティでした。発酵デザイナーの小倉ヒラクさんに、みんなが楽しく味わえるような発酵食品のパーティフードを相談したところ、吉祥寺の発酵食レストラン『タイヒバン』の元シェフで、今『渋谷菌友会』の中心メンバーでもある発酵料理人の森本桃世さんを紹介していただいて。そのときに桃世さんがつくってくれたケータリングの料理がこちらです」

渋谷 菌活会 ロフトワークのクリスマスパーティで提供された料理。テーマは「Edible Fermentation Science 〜食べる発酵サイエンス〜」。すべてのメニューが発酵食品でできている。

「おおお…これは……!!」

「私は発酵食品が特に好きだったというわけではなかったのですが、こんなに美しくておいしい発酵料理があるんだということを知ったら、一気に発酵に興味が湧いてきて。そこから桃世さんと仲良くなって、この活動を一緒にやることにしたんです。ここからの話は、桃世さんにバトンタッチしますね!」

「発酵」で「食」を考える

渋谷 菌活会

「いやあ、すごい料理ですね〜〜〜(食べてみたい!)」

「このときは小倉ヒラクさんと相談しながら、『免疫』や『コンポスト』など五つのテーマで料理をつくったんです。生のマッシュルームに発酵調味料をかけて食べる『全方位菌食レシピ』とか、発酵飼料で育てた牛の肉や、その牛の堆肥で育てた野菜など、とにかく発酵尽くしにこだわりました。それまでにも発酵料理はつくってきたのですが、このときのケータリングで発酵料理人としての自分が完成したといってもいいかもしれません」

「おお、料理人としてのターニングポイントになったんですね。そもそも発酵に関心を持ったきっかけって何だったんですか?」

「私は以前パティシエをやっていたんです。そのときにめちゃくちゃな生活をして体を壊してしまって、そこから少しずつ体のことを考えて発酵に関心を持っていきました。自分が普段食べているものが自分の体をつくっているんだよ、ということをみんなに伝えていきたいと思って、自分の料理にも発酵を積極的に取り入れるようになったんです」

渋谷 菌活会

「食べているものが体をつくる、大事なことですよね〜」

「特にオフィスワーカーは食生活が乱れがちなので、それが発酵によってどう変わっていくのかなというのを、自分の目で確かめたいというのもあってこの活動を始めました。それで、はじめは私が酵母からパンをつくる方法とか、発酵料理の初歩的な部分をレクチャーしていて」

「発酵の知識を伝えていくうちに、参加者のなかに変化がありました?」

「そうですね。みんな知識だけじゃなくて、実際に手を動かしているので、発酵に関する話もどんどん内容が深くなってきました。私もみんなとの会話のなかからいろんな気付きをもらうので、それをどうやって自分の料理にも生かしていけるかということを考えています」

「生き物相手の発酵が興味深いから、やっぱり掘り下げたくなっちゃうんでしょうね〜。では、この活動でプロの料理人である桃世さんがおもしろいと感じる瞬間ってどんなときでしょう?」

「自分にはなかったような視点に出会えるときです。料理って、自分の世界のなかだけでやっていると行き詰まることがあるんです。型にはまってしまうというか。それを自分の世界の外側にいる人たちがいい意味で壊してくれるなあと感じていて」

「へええ」

「たとえば、古代のチーズを再現しようとか、発酵と神話の世界を結びつけようとか、そういうアイデアがポンポン出てくるわけです。それって普通に料理だけをしていたら気付けないこと。そういうアイデアをどういう風に具体化させるかというところで、私の知識や経験がみんなの役に立てばいいなーと思っています」

渋谷 菌活会

「いろんなアイデアを持った人がいて、知識と経験をもった人がいて、それがお互いに作用しあっているというのは、発酵的かもしれませんねえ」

「そうですね。あと私は発酵には正解がないというところもおもしろいと思っていて。こうじゃなくちゃいけないというのがないから、みんな自由に考えを深めていけるんですよね。渋谷はいろんな人が集まる場所だから、それが発酵的に作用して、どんどん新しい発想が生まれていったらいいなと」

「うんうん」

「それでいうと、私のとなりに座っている浅沼由美さんはこの活動を通じて発酵が進んだ人で(笑)。彼女は会社のデスクで発酵食品を仕込むようになったツワモノなので、ぜひ話を聞いてみてください」

実験から得られる「学び」を大切にしたい

渋谷 菌活会

「デスクで発酵食品を仕込んでいるんですか? 大胆でいいですね〜!」

「仕事で家に帰る時間が遅くなると自分をケアする時間が取れないので、会社のなかに生活を持ち込んでみるという実験をさせてもらいました。私は料理好きというのもあって、自分で仕込んだものが近くにあると、すごく落ち着くんです。デスクに発酵食品があるとほかの人も興味を持って話しかけてくれますし、仕事の合間にリラックスをつくるいいきっかけになってます」

「コミュニケーションにも生かされていると! ちなみにどんなものをつくったんですか?」

「こないだつくったのは、ジャガイモを乳酸発酵させる『ザワークラウト』ですね。ザワークラウトはキャベツでつくるのが一般的なんですが、普通にやってもただおいしかったね〜ということで終わってしまうので、それをあえてジャガイモでやってみました。最終的にはガレットにして焼いて食べたんですが、ジャガイモの味が濃くなっていたのは発見でしたね。桃世さんが実験してつくった発酵マッシュルームソースと合わせたら、とてもおいしくて感動でした!」

渋谷 菌活会

「いやあ、みんなそれぞれの向き合い方があっておもしろいなあ。ところで浅沼さんは二代目の部長ということですが、この活動ではどんなことを大切にしていきたいと考えているんですか?」

「私は『学び』を大切にしたいです。会社という公共の場を使わせてもらっている以上は、この活動をただ遊んでるだけみたいにはしたくないなって。だから発酵のテーマを決めたら、それについて調べたり、背景を知る努力も今以上にしていきたいと思っています。その上で自分だったらどんなことができるかも考えていきたいですね」

「たしかに発酵は日本の歴史や文化にも紐付いていますし、未来のテクノロジーにもつながっていきそうな注目のテーマなので、学びを深めるのにはぴったりかもしれません。これからの活動も応援しています。今日は話を聞かせてくださってありがとうございました!」

まとめ

健康志向の高まりなどから近年注目を集めている「発酵」をテーマに、さまざまな実験をしているこのプロジェクト。発酵食品をみんなで仕込んでみたり、味わってみることで、新たな気付きが生まれ、メンバーそれぞれの仕事や生活にもいい影響が広がっているようです。

現在「渋谷菌友会」は参加メンバーによる招待制のコミュニティになっていますが、今後誰でも参加できるようなオープンなイベントも企画していきたいと考えているそう。常に新しい姿に生まれ変わっていく渋谷の街のように、進化する渋谷菌友会のこれからの活動にも注目していきたいですね。

渋谷 菌活会

ではまた!

▼渋谷菌友会ブログ
http://www.loftwork.jp/column/2017/20170120_fungus.aspx

【書いた人】

根岸 達朗

根岸 達朗(ねぎし・たつろう)
フリーライター。発酵おじさん。縄文好き。合気道白帯。ニュータウンで子育てしながら毎日ぬか床ひっくり返してます。

Twitter:onceagain74(https://twitter.com/onceagain74
Facebook:https://www.facebook.com/tatsuro.negishi




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