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映画解説者・中井圭の「今宵は渋谷で映画でも?」vol.33 スーパーヒーローが「時代」を描く『インクレディブル・ファミリー』

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2018/8/1更新

本コラムでは、「映画をもっと知りたくなる」をテーマに、渋谷で観ることができる作品をご紹介します。33回目は、2018年8月1日(水)公開の映画『インクレディブル・ファミリー』です。本作は、TOHOシネマズ渋谷でご覧いただけます。

スーパーヒーローが描く「時代」

スーパーヒーロー映画が空前の大ブームを迎えています。現在は、アイアンマンやスパイダーマンなどを有するマーベルや、バットマンやスーパーマンなどを有するDCが、コミックレーベルの2強と言ってもいいでしょう。しかし、これらとはまた違う流れを汲んだスーパーヒーロー映画が、2004年に登場して大ヒットを記録しました。

『Mr.インクレディブル』というその作品は、『トイ・ストーリー』などを制作したピクサー・アニメーション・スタジオによるスーパーヒーロー映画で、観客と批評家の両方から非常に高い評価を受けました。今回ご紹介するのは、その14年ぶりの続編『インクレディブル・ファミリー』です。

CAP:©2018 Disney/Pixar. All Rights Reserved.

前作は、スーパーヒーローが強力すぎるその能力を使うことを禁じられ引退した社会が舞台。超人的な特殊能力を持った元スーパーヒーロー夫婦を中心とした5人家族が、普段は力を隠しているものの、悪と立ち向かうために家族全員が力を合わせそれぞれの能力を使って共闘するものでした。

前作のラストは、地中から現れた悪役アンダーマイナーが銀行強盗を行うのを阻止すべく、一家が力を結集する、ちょうど良いところで幕が下りたのが印象的でした。本作は、そんな前作の終わりから始まります。

アンダーマイナーの犯罪行為を阻止するために戦った結果、守るべき街を破壊してしまいスーパーヒーローとして活動できなくなる一家。そんな失意の中、ある大企業の社長から、一家の父であり、怪力無双のMr.インクレディブル(ボブ)ではなく、彼の妻で伸縮自在の体を持ち、街を破壊する可能性も低いイラスティ・ガール(ヘレン)に、スーパーヒーロー活動の依頼が来ます。

これまでスーパーヒーロー家族の主軸として活躍していたMr.インクレディブルは、本作では新たに主夫として、世界ではなく家を守ることになるのです。

CAP:©2018 Disney/Pixar. All Rights Reserved.

本作の魅力は、娯楽色の強いスーパーヒーロー映画でありながら、時代性を大きく反映している点です。前述したように、かつての主役であるMr.インクレディブルは、妻の仕事を全面的に支援する一家の主夫として、いわゆるワンオペ育児に取り組みます。

恋愛がうまくいかずデリケートになっている長女と全然言うことを聞かない長男、そして、自分の超能力をコントロールできない赤ちゃんという3人を抱えてごく普通の日常生活を行うことが、いかに大変なことなのかを描いています。

CAP:©2018 Disney/Pixar. All Rights Reserved.

普段はスーパーヒーローとして完全無欠の強さを誇るMr.インクレディブルですが、子供3人を抱えて精根尽き果てる様子に、現代のワンオペ子育ての過酷さと、普段、多くの家庭で子育ての大部分を引き受けてくれている女性たちの偉大さが描かれています。

特に、赤ちゃんという最も手に負えない存在を育てることの労苦を、超人的能力を発揮するスーパーヒーロー赤ちゃんの育児というユニークな方法で描写しているのがウィットに富んでいます。

また、本作は、女性の活躍という点でも現代的な面を持っていると言えます。前述した通り、本作では、Mr.インクレディブルが主夫として家を切り盛りしている間、スーパーヒーロー活動は、妻のイラスティ・ガールが担当しています。さらに、大企業の重要キャラクターを演じるのもまた女性。女性が前面に出ていく社会が求められる現代において、映画が一足先にそれを体現しているのです。

そして、本作は、14年の月日が流れても変わらないテーマとして、人々が本当に大きな力を発揮するのは、家族が結束するときであるということを伝えようとします。

彼らは全員スーパーヒーローですが、個々で能力を発揮するよりも、家族を思い信じ合うことで何倍にも大きな力を出すことができます。この現代的なテーマが揺るぎない軸として存在し、その上で今を投影した時代性が加わることで、本作はさらに光り輝いたのです。

CAP:©2018 Disney/Pixar. All Rights Reserved.

▼Information
『インクレディブル・ファミリー』
https://www.disney.co.jp/movie/incredible-family.html
8月1日(水)TOHOシネマズ渋谷、ほか公開

▼中井圭 プロフィール
兵庫県出身。映画解説者。WOWOW「映画工房」ニコ生公式「WOWOWぷらすと」「シネマのミカタ」TOKYO FM「TOKYO FM WORLD」などに出演中。「CUT」「STUDIO VOICE」「michill」「Numero TOKYO」「観ずに死ねるか」シリーズなどで映画評を寄稿。東京国際映画祭や映画トークイベントに登壇し、映画解説を展開。面白い人に面白い映画を観てもらって作品認知度を高めるプロジェクト「映画の天才」や物事に関心のある人を増やすPJ「偶然の学校」などを主催。




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