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映画解説者・中井圭の「今宵は渋谷で映画でも?」vol.36 音を出したら即死『クワイエット・プレイス』

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2018/9/22更新

本コラムでは、「映画をもっと知りたくなる」をテーマに、渋谷で観ることができる作品をご紹介します。36回目は、2018年9月28日(金)公開の映画『クワイエット・プレイス』です。本作は、TOHOシネマズ渋谷でご覧いただけます。

映画館の音響で味わう異様な“緊張感”

CAP:© 2018 Paramount Pictures. All Rights Reserved.

映画館は、日常から逸脱した特殊な空間です。大きいところだと20メートル幅のスクリーンがあり、400席以上の座席を有しています。

そこで観る映画には圧倒的な臨場感があります。中でも音響はとても重要で、日常ではまず味わえない大音量や繊細な音を伝達します。今回ご紹介する『クワイエット・プレイス』は、その名の通り、音に注目した映画です。

CAP:© 2018 Paramount Pictures. All Rights Reserved.

荒廃した世界が舞台となった本作。音に敏感に反応する何者かによって、地球上の生物は次々と襲撃され、地上で栄華を誇っていた人類さえも、絶滅の危機に瀕しています。

そこに生き残っている夫婦と子供2人の家族は、かつて不注意から幼い次男を襲撃により失い、今なお、その暗い過去に覆われて暮らしています。それでもどうにか沈黙を貫いて生き抜いてきた一家ですが、妻エヴリンは妊娠して出産を目前に控えている状況なのです。彼らはどうやってこの世界を生き延びていくのか。

CAP:© 2018 Paramount Pictures. All Rights Reserved.

本作は、少しでも音を出したら襲われて即死する、という極めて特殊なシチュエーションが異様な緊張感を生んでいます。彼らは音を出さないために、手話を使ってコミュニケーションを取り、普段歩く道にも砂を撒いて裸足で歩きます。

家の中でも全く音を立てられないため、映画全編がほとんど音のない状況で進んでいきます。この音を出せない状況こそ本作の肝であり、その設定が映画館の空間にも伝染します。

CAP:© 2018 Paramount Pictures. All Rights Reserved.

日本の映画館はとりわけ、マナーとして声や音を出さない文化があります。つまり、上映中の映画館自体も“クワイエット・プレイス”なのです。それゆえに、主人公一家の静寂を見つめ、襲撃に怯えて息をのんで見守る観客たちは、劇中の物音ひとつ見逃さない感覚で、いつも以上に音を立てないように画面を注視することになります。

作品に没入すればするほど、そこに漂う緊張感は、異様なレベルにまで上がることになるでしょう。つまり、その瞬間、映画館という現実世界がスクリーンの向こう側の虚構世界と地続きになるのです。

CAP:© 2018 Paramount Pictures. All Rights Reserved.

そこで機能するのが、前述した映画館の音響です。映画館の音響は、大きな音を出せるということだけではなく、極めて繊細な音を表現することが可能です。つまり、何かが軋む音やかすかな呼吸音でさえも、可聴音として拾い上げることができるため、主人公家族の一挙手一投足の細やかな動きが、緊張感と共に感情を伝えてくるのです。

活気にあふれノイジーな渋谷を歩くみなさまには、是非、映画館という特殊な音場で、この“クワイエット・シネマ”な本作をご覧いただければと思います。この世界に踏み込んだ瞬間から一気に異世界を味わうことができます。

CAP:© 2018 Paramount Pictures. All Rights Reserved.

▼Information
『クワイエット・プレイス』
https://www.reallylikefilms.com/asakuru
9月28日(金)TOHOシネマズ渋谷ほか全国ロードショー

▼中井圭 プロフィール
兵庫県出身。映画解説者。WOWOW「映画工房」ニコ生公式「WOWOWぷらすと」「シネマのミカタ」TOKYO FM「TOKYO FM WORLD」などに出演中。「CUT」「STUDIO VOICE」「POPLETA」「Numero TOKYO」「観ずに死ねるか」シリーズなどで映画評を寄稿。東京国際映画祭や映画トークイベントに登壇し、映画解説を展開。面白い人に面白い映画を観てもらって作品認知度を高めるプロジェクト「映画の天才」や物事に関心のある人を増やすPJ「偶然の学校」などを主催。




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