渋谷で愛され続ける理由。Bunkamura『ル・シネマ』で

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渋谷駅から渋谷109の横を通り、賑やかな喧噪を抜けてしばらく歩いていくと、そこには渋谷の中心街とは一線を画し、ゆったりとした空気の流れる『Bunkamura』が見えてきます。
1989年に誕生し、日本初の大型複合文化施設として渋谷カルチャーを牽引してきた『Bunkamura』が誕生して約30年。
オープン以来文化の発信地として常に注目を集め、年間約280万人も訪れるというこちらの文化施設の中でも、こだわりを持った独自の作品で映画ファンのみならず幅広い客層に人気の高い映画館がここ、『ル・シネマ』です。
そんな『ル・シネマ』の今について、ご自身も学生時代から『ル・シネマ』のファンだったとおっしゃるご担当の甲斐さんに、今回取材してきました。

ル・シネマ入り口

一つ一つを選んで決める、単館上演ならではの楽しみ方

ル・シネマスタッフインタビュー

全国ロードショー作品を上映しているところから単館上映作品を取り扱うミニシアターまで、渋谷には数多くの映画館があります。特に渋谷には個性溢れるミニシアターが多くあり、『ル・シネマ』もその一つ。では、そんな『ル・シネマ』で上映される作品の特徴とは?
「『ル・シネマ』で上映する作品は、毎年編成担当者がカンヌ、ベルリン、トロントなど世界中の映画祭に直接出向いて自らピックアップし、厳選して決めた作品です。
館名がフランス語であるようにフランスの作品を多く上映していますが、その他にもアジアやヨーロッパなど様々な国の文化を感じられるオリジナリティ溢れる作品が多いのも特徴の一つと言えますね。
お正月に上映し、多くの方の支持を頂いた『アンジェリカの微笑み』もその一つで、「ポルトガル・スペイン・フランス・ブラジル」と4カ国合作の作品なんですよ。」

そう、『ル・シネマ』の魅力は、大型のシネコンなどとは異なり「ここ」でしか観ることのできない厳選された作品、テーマの一貫した作品を集めて多数扱っていること。
過去にも、ドキュメンタリー、歴史作品、ファッションや音楽作品、上質な恋愛映画など、数々の名作を上映し続けています。

映画業界の変化と、ミニシアターとのこれからの付き合い方。

ミニシアター

今年の初め、渋谷のミニシアター文化を牽引してきた映画館の一つ『シネマライズ』が閉館したことは皆さんも記憶に新しいはず。
映画業界において多くのミニシアターが厳しい局面を迎えている中、今でこそ感じる「ミニシアターの魅力」を改めて伺いました。
「私自身が若い頃から映画ファンであり、学生時代はこの『ル・シネマ』によく通っていました。そんな映画館で今働いているのは、なんだか不思議な気がします (笑) 。
その頃は今と比べるともっと渋谷のミニシアターも活発な時代でしたので、今の渋谷の映画館事情に関しては個人的にも寂しい気持ちです。
『ル・シネマ』では今でも専門の映写技師が昔ながらのフィルム映写機を使って名作を自主企画上映もしているのですが、そういう映画館も名画座さんを除くとずいぶん少なくなったのではないかと。

ル・シネマ機材

ミニシアターの素敵なところって、環境も含めたその「空気感」じゃないかと思うんですよね。
たとえば『ル・シネマ』だと、まず緑に囲まれた入口から入ってきて、劇場やギャラリー、ブックストアやレストランなどの静かな雰囲気を味わいながらクリスタルエレベーターで上層階まで上がってきて、いよいよ映画館までたどりつく。
心に染み入る映画を楽しんだら、その余韻に浸りながら帰っていく。
そんな全ての時間を含めて、じっくりと映画と向き合っていただきたいな、と。」

Bunkamura

長く愛され続ける努力と、更なる進化への挑戦。

そんな『ル・シネマ』では、素晴らしい作品を上映するのはもちろんのこと、お客様に繰り返し足を運んでいただくためのこんな取り組みも。
「自動発券機の映画館も増えましたが、チケットの受け渡しを対面で行うこともミニシアターならではだと思います。細やかな気遣いを大切にしています。
また、よくいらっしゃるお客様はご存知の方も多いのですが、『ル・シネマ』では上映作品の大半のプログラムを自社製作しています。最近では劇場でプログラムを作っているところは非常に少なくなっていて、中にはコレクションしてくださっている方もいらっしゃいますね。バックナンバーも販売しているので、過去のお気に入り作品を見つけて記念に買っていかれる方もいらっしゃいます。」
ここでしか取り扱いのないオリジナルのプログラム。大好きな映画と、映画を楽しんだ思い出の時間をプログラムに込めて手元に残しておく。そんな映画との深い付き合い方も、『ル・シネマ』ならではの提案です。

ル・シネマオリジナルプログラム

一方で、これまで来られたことのない方にもぜひ一度見ていただきたい、そんな思いも。
「若いお客様にもっと気軽に足を運んでいただきたいという思いもあり、学生割引を始めました。また、毎週火曜日のサービスデーやTOKYUカードでの割引など、お得なサービスも色々と行っています。」

2016年上半期
見逃せない注目作品はこれ!

最後に、今年注目の作品についてお伺いしました。

映画「ユース」

(写真提供:c 2015 INDIGO FILM, BARBARY FILMS, PATHE PRODUCTION, FRANCE 2 CINEMA, NUMBER 9 FILMS, C -FILMS, FILM4)

「若いお客様に特におすすめなのは4月公開予定『ユース(原題)』という作品です。著名な作曲家の主人公フレッドが“自らの老い、輝かしい若さ、そして人生のクライマックス”を見つめるという物語ですが、‘21世紀の映像の魔術師”ともいわれ注目されるイタリア人監督ならではのエロチックで少し退廃的な映像美はとても刺激的です。
また、甘酸っぱい恋愛映画を楽しみたい方には『あの頃エッフェル塔の下で』がおすすめ。
役者初体験の主人公の演技がみずみずしくて魅力的なフランス映画です。
個人的な一押し作品は、こちらも4月公開予定の『山河ノスタルジア』。中国の若き巨匠ジャ・ジャンクーが、ある女性とその息子を過去・現在・未来と26年間にわたり、さらに中国・オーストラリアという2大陸を舞台に壮大に描きます。母と子の、時間も距離も超える不変の愛に痺れる傑作です!
ミニシアター未体験でどこから始めれば?という方には、チラシやビジュアルからジャケ買い?的に選んでみても、新たな作品に出会えて楽しいですよ。」

『ル・シネマ』では、半年に1回、半期分のラインナップを発表しているそう。
見たい映画のスケジュールは早めにチェックして、押さえておきたいですね。

今後の上映スケジュール
http://www.bunkamura.co.jp/cinema/lineup/next.html
※「アンジェリカの微笑み」「あの頃エッフェル塔の下で」上映は1月29日(金)までとなります。

休日のデート、仕事の終わり、ちょっと一人になりたい時、疲れて一息つきたい時。
どんなシーンでも温かく迎えてくれる映画が、『ル・シネマ』にはあります。
『ル・シネマ』で、今年の映画始めをしてみてはいかがでしょうか?

Bunkamura ル・シネマ
〒150-8507 東京都渋谷区道玄坂2-24-1
TEL.03-3477-9264

※記事の内容は公開時点の情報です。価格等の情報については変更している可能性がありますのでご了承ください。
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