イッタラ(iittala)のブランド創立140周年を記念した展覧会「イッタラ展 フィンランドガラスのきらめき」が、東京・渋谷のBunkamuraザ・ミュージアムにて11月10日(木)まで開催中です。
フィンランドを代表するライフスタイルブランド・イッタラは、1881年、人里離れたイッタラ村のガラス工場としてスタート。「美しさと機能性をすべての人へ提供する」という、フィンランドデザインの巨匠アルヴァ・アアルトやカイ・フランクの思想のもと成長を続け、今や北欧最大のガラスメーカーとして知られています。
イッタラの日本で初めての大規模展覧会。長い歴史の中で世に送り出されてきた約450点の作品が展示され、20世紀半ばのクラシックデザインを中心に、イッタラの歩みを振り返ることができます。世界最大級のイッタラコレクションを誇るフィンランド・デザイン・ミュージアムと、イッタラのアーカイブから選定された貴重な作品を通して紹介される、イッタラが辿った軌跡は一見の価値あり!です。
約450点の作品を4部構成で展示。「Timeline イッタラ140年の歴史」ではイッタラの歴史を振り返り、「Designers イッタラとデザイナー」では8人の代表的なデザイナーごとに作品を紹介、「From Nature to Culture イッタラを読み解く13の視点」では制作工程や職人技に触れ、「Iittala and Japan イッタラと日本」ではなじみのあるコラボレーションなどを中心にイッタラと日本の深い交流を知ることができます。
まずは第1章「イッタラ140年の歴史」へ。ここでは、140年続くイッタラの歴史をじっくりと振り返ることができます。イッタラの始まりは、1881年、フィンランド南部のイッタラ村に設立されたガラス工場から。イッタラの歴史は、伝統の職人技を継承すると同時に、新しい表現を追求していくもの。その姿勢は創業当時からずっと変わっていません。家庭用のグラス、ボトル、薬瓶などを製造しながら、クリスタル・カット製品も開発し、19世紀末にはカット・クリスタルのメーカーとして名を馳せていきます。
おなじみの「iロゴ」が誕生したのは1950年に入ってから。ティモ・サルパネヴァ(イッタラのグラフィックデザインを担当)が手がけた本シリーズの赤い「iロゴ」は、見ただけでイッタラの製品と分かる、我々にもなじみのあるマークです。イッタラのシンボルとも言える存在で、大きく変更することなく今日まで使用され続けています。
イッタラといえば、ガラスが真っ先に浮かぶ方も多いかもしれません。しかし、第1章でその歴史を振り返る中で、さまざまな工場やメーカー企業の合併や統合をしながら、ガラスのみならず陶磁器やインテリア·プロダクトにおいて、イッタラのデザインが技術、素材、コンセプトの点でつねに可能性を広げてきたことを知ることができます。
「イッタラとデザイナー」では、イッタラでデザインに携わってきた8人のデザイナーの紹介とともに、それぞれの代表作が展示されています。世界的建築家のアルヴァ・アアルト、グラフィックデザイナーのティモ・サルパネヴァ、色彩の開発に注力したフィンランドの伝説的デザイナー、カイ・フランクなど、デザイナー陣の活躍の分野がさまざまなところもイッタラらしさといえます。
このセクションには、デザイナー紹介やプロダクトとともにデザインスケッチなども展示されており、プロダクト誕生までの軌跡を辿ることができるのもポイントです。また、イッタラといえば美しさと機能性を兼ね備えた日用品というイメージがあるなか、オイバ・トイッカが生み出した「バード バイ トイッカ」シリーズは、異彩を放っています。イッタラのガラス製作技術を駆使したアートな鳥の表現、その美しさに目を奪われます。
第3章「イッタラを読み解く13の視点」は、イッタラの芸術を13の視点から読み解くセクションです。13の視点とは、「素材としてのガラス」「職人の技」「型でつくる」「マジック・リアリズム 自然と精霊との対話」「気候と文化」「陶磁器とガラス」「アーキタイプ 基本のかたち」「カラー」「戦後フィンランドの外交とデザイン」「広告イメージ 世界観を伝える」「ミメーシス 自然の模倣」「連ねる、重ねる」「リサイクルとサステイナビリティー」。吹きガラスの型や製造工程を展示しているので、ガラス工場の映像とともに、実際の製造工程を知ることができます。
吹きガラスの製造には、木型、スチール型などが使用されます。現在はスチールの型が使用されているコレクションでも、木型が使われていた時代もあり、同じデザイナーのコレクションでも使用する型の違いで、フォルムにも大きな違いが生まれています。
イッタラの特徴でもあるカラーバリエーションのこだわりを知ることができる、カラーサンプルも展示。ガラスの厚みにより絶妙な色合いが再現されることが分かります。新色の開発には数年費やすこともざらにあるとのこと。カラーパレットは現在200色あるそうですが、新色も開発され続けているというお話を伺い、イッタラの止まらない探究心、常に新しいものに挑戦する姿勢を感じました。
また、このセクションではイッタラの特徴でもあるスタッキングも堪能できます。収納スペースが限られていても、美しいプロダクトは見せて飾りたいもの。イッタラ製品を美しく飾るときの参考にもなる展示の数々でした。
「イッタラと日本」では、日本のデザイナーや建築家とのコラボレーションを紹介しています。イッタラと日本の関係は、1950年〜60年代にさかのぼります。この時期にカイ・フランクはたびたび来日し、日本の工芸やデザインに触発された製品を残しています。また、日本のフィンランド・デザインへの関心も高く、イッタラ製品を含む大規模な展覧会も同時期に東京で開催されました。このセクションで展示されているカイ・フランクのケトルをひと目見れば、日本の工芸の影響を大きく受けていると感じることができるはずです!
21世紀に入るとイッタラは国際的なコラボレーションを積極的に進め始めます。日本のブランド「イッセイ ミヤケ」や「ミナ ペルホネン」、そして建築家の隈研吾と行われた仕事の数々も紹介されています。
約450点の展示とともにイッタラの歴史を振り返ることができる本展覧会。圧巻の展示数ですが、プロダクトの美しさとイッタラの歩んできた歴史のおもしろさ、映像なども使ったこだわりの演出で見るものを楽しませてくれます。展示を見るだけでもイッタラの140年を十分に堪能できますが、イッタラの技術と哲学、デザインの美学に迫る「展覧会図録」も手元に置いておきたくなるアイテムです。
Tシャツ(全5種)やトートバッグ(全4種)、マグネット(オイバ・トイッカモデルが全10種にその他全4種)やピンズ(全10種)、てぬぐい(全2種)やノート(全3種)、ポストカード(全16種)などさまざまなグッズも登場しています。美しいプロダクトを堪能後には、ひとつ、新たなイッタラ製品を手に入れたいところ。そんなときは、展覧会限定アイテムのアアルト ベース「クリア1937」がおすすめです。本展覧会を記念して1937年発売当時の特別な色「クリア1937」が復刻。緑がかったクリアな色は、フィンランドの砂に含まれる鉄分が生み出す独特の色合いを再現しています。サイズは95mmと120mmの2種が数量限定で販売され、“ALVAR AALTO IITTALA 140 Years Exhibition Japan 2022-2024”の刻印入りという特別なものとなっています。
フィンランド・デザイン・ミュージアム 展覧会担当上席学芸員のハリー・キヴィリンナ氏は、本展覧会の見どころについて「さまざまな色彩のイッタラのガラス製品がいかに自然から影響を受けているかが分かります。日用品でありアートでもある製品の歴史を知ってもらいたいです」とコメント。日用品として、そしてアートとしても楽しめるイッタラ製品の歴史を堪能してみてはいかがでしょうか。
<開催情報>
【2022年9月20日時点】
※最新の情報はBunkamura HPをご確認ください。
【イッタラ展 フィンランドガラスのきらめき】
URL:https://www.bunkamura.co.jp/museum/exhibition/22_iittala/
会場:Bunkamura ザ・ミュージアム
https://www.bunkamura.co.jp/museum/
開催期間:2022年9月17日(土)〜11月10日(木)
※9月27日(火)は休館日。
開館時間:10:00~18:00
※毎週⾦・⼟曜⽇は21:00まで。
※入館は各閉館時刻の30分前まで。
※状況により、会期・開館時間などが変更となる可能性あり。
※展覧会概要のほか、内容は変更になる可能性もございますので最新情報はBunkamura HPまでご確認ください。
※記事の内容は公開時点の情報です。価格等の情報については変更している可能性がありますのでご了承ください。
取材・文/タナカシノブ